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第33話

「とりあえず人が多いとこにいれば大丈夫だと思うけど…あー翔、何が欲しいんだっけ?」 夏樹が翔の買い物を済ませようと聞いてみても翔は首を横に振るだけ。 気持ちを落ち着かせるためにお店の中に入ってもガラの悪い数人が同じ店に入って始終こちらを睨んでいた。 どうしよう、 今日は出かけるべきじゃなかった。 だけど来てしまったものは仕方ない。 このまま帰っても下手したら家がバレてもっと面倒になるのが目に見えているから帰れないし... 翔を休ませるために一旦ショッピングモールの中央広場に設置されている休憩用の椅子に座った。 それでも遠目から俺たちを見ている奴らがいるのは良く分かった。 なんで俺を探しているんだろう? 「こわいよ、っ」 翔は俺と夏樹に縋りながら声を震わせた。 可哀想だ。 自分のせいで翔をこんなに怖がらせてしまっていることにとても腹立たしかった。 まだまだ外は明るく人通りも多い。 「2人とも俺は大丈夫だから帰れる?」 「お前何言って…」 夏樹が俺に掴みかかってきて翔があわててそれを止めた。 「俺なら大丈夫だし」 ケンカならそれなりに自信があるし… ニコッと2人に不安を感じさせないような笑顔を見せる。 そしたら夏樹は舌打ちして 「携帯貸せ」 って強引に俺の携帯を奪った。 何かを操作してから自分の携帯にメモをして俺に携帯を渡してきた。 「GPS、起動させといたから…何かあったらすぐに言ってこい」 「あぁ別に良いのに…ありがとね」 広場から移動してタクシー乗り場に並んだ。 それからすぐにタクシーは捕まって2人を見送り、近くにいた黒っぽい服の男に近づいた。 「話くらいなら聞いてやるからあの2人のことは追うな」 俺は精一杯の鋭い目を意識しながらそいつを睨んだ。

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