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第37話
思わず後ろを振り返る。
あぁ、まただ。
また、この手が俺を止めてくれる。
「玲緒…っ」
そこには心配そうに俺の顔をみる唯がいた。
だけど俺は止まれない。
掴まれた腕を払い目の前の男を殴る。
一度じゃ足りなくて、何度も何度も顔を殴る。
「玲緒!もういい!やめろっ」
唯は俺の腕を掴んだ。
そのおかげで相手を殴ることはできなくなって、一気に力が抜けていった。
「玲緒っ!」
唯が俺の名前を呼んでたけど、瞼はどんどん落ちてきてそれに逆らうことはできなかった。
次に目が覚めた時、真っ白な天井が見えた。
ここ、俺の家じゃない…
それが理解できると無理やり体を起こした。
「いたた…」
身体中がぎしぎしと悲鳴をあげるのが分かった。
「あ、起きた?自分の名前分かる?」
横には見たこともない知らない人がいてちょっとだけこわくなった。
その人には「俺は医者で七海だよ、よろしくね」なんて軽い自己紹介をされ、突然かけられた声に驚きつつも質問に答えた。
「玲緒、っていう名前…です」
「良い名前だね…あ、唯!玲緒くん起きたよ」
唯は手にコンビニの袋を持ってそこにいた。
俺の姿をみると駆け寄ってきてくれて優しく頭を撫でてくれた。
ふわっと香る唯の匂いに思わず顔を綻ばせた。
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