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第38話
「…約束、破ってごめんなさい」
「今はいい」
「怒ってないの?」
「怒ってないけど怒ってる」
「この前も言ってたよ、それ」
そんなやりとりをする俺たちの様子を見て七海さんは何かを察したらしく部屋を出て行った。
そしたら唯にぎゅうって抱きしめられて、苦しいけど嬉しかった。
「なんで来てくれたの…?」
「夏樹くんが教えてくれた」
「ゆい...ありがと…」
「別にいい。それより名前、なんていうんだ」
「え?...玲緒だけど…」
「名字、さっき七海との話聞いててそういえば聞いたことなかったな、と思って」
そういうことか、と納得した。
「逢坂、っていうよ 逢坂玲緒」
「そうか」
そう言ってわしゃわしゃと頭を撫でられた。
「無理はしてほしくない」
「無理なんかしてないよ?」
「…してるお前さっきのケンカで軽い脳震盪起こしてたって七海が言ってた」
「…ごめんなさい」
「それに左手も…」
唯は俺の左手に視線を落とした。
出来るだけ見ないように、唯に見えないように、ってちょっとだけ隠してたつもりだったけど、当然無理で。
俺の左手は固定され包帯でぐるぐる巻きになっていた。
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