52 / 337
第52話 唯side
「ごめん唯!葉月が風邪引いてるみたいで…今日は帰ってもらえる?」
慌ててリビングに戻ってくるなりそう言った玲緒。
それを聞いて、これは葉月と話をするチャンスだと思った。
「でも今から買い出しとか行くんだろ?」
「あっ、行かなきゃ」
そういった玲緒は今、それを思いついたらしくて呆けた顔をしていた。
…大丈夫なのか?
「そしたら俺、葉月ってやつのことちゃんとみておくから行ってこい」
「え、いいの?」
「あぁ」
それから玲緒にカードを渡して送り出した。
玲緒は渡されたカードに少し戸惑っていたが「早く行け」といってやるとすぐに出て行った。
2階から戻ってきた玲緒の様子は少し元気がなかった。
また葉月と何かあったのだろうか?
葉月との関係があまり良いものではない、ということは以前、玲緒から聞いた話で理解していた。
葉月のいる部屋へとゆっくりと足を進め、ドアの前に立ち、静かにドアを開けた。
「チッ、また、来たのか…うざいんだよ」
部屋に入っていきなり吐かれた暴言に、これは玲緒が傷つくわけだと思った。
「…あんた、だれ?」
返事がないことを不思議に思ったのか毛布にくるまっていた葉月は顔を出してこちらをみていた。
「ど、泥棒!?」
「違う、玲緒の…」
恋人、といっていいのか?
唯は玲緒の弟を混乱させて、また玲緒が傷ついてしまわないか心配になった。
「玲緒のなに…?」
葉月は眉を潜めながらこちらを睨んでいた。
ともだちにシェアしよう!