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第54話
葉月が風邪をひいてから1週間。
最近、葉月の様子が少し変だった。
最近は俺と口を聞いてもくれない。
何をいっても全部無視で、無視されるのも正直辛いなぁなんて考えていると
玄関からガチャリと音がして葉月が帰ってきた。
「あ、おかえり」
「…」
またもや返事も返してくれない葉月。
「ねぇ葉月、俺何かした?最近ちょっと変だよ」
そういうと葉月は俺の方を見もせずにゆっくりと口を開いた。
「…あの男、誰なんだよ」
「あの男?…あ、月宮さん?」
あの男、といわれて思いついたのは唯だった。
葉月の前だったので一応名字で呼んだけど…
「どういう関係?」
葉月は鋭い視線を向けながら俺を睨んでいた。
「どうって…葉月には関係ないだろ?」
「チッ、…お前さぁ、いらいらするんだよ!俺は受験で遊んでる暇ないのにお前はいつもヘラヘラしてさ!」
「ごめん、ね…」
「この前も家に帰ってこないで遊んでたんだろ?最近だって携帯みてニヤニヤして…うざいんだよ!目に入るといらつくんだよ!!」
「ごめん、ごめん葉月」
「…許してほしいか?」
葉月はニヤッと口角を上げて微笑んだ。
良いことを考えてる顔じゃない、
「う、ん」
ていうか俺って本当に悪いことしてたっけ?
「俺、血をみてみたいんだよね…お前よくやってただろ?」
「…分かったよ」
つまり葉月は俺にリストカットをしろ、と言っている。
確かに俺は以前よくやっていた。
まだ感情のコントロールが上手くできていなかった頃の話だけど…。
今はもうやめているが、その時はそれがケンカと同じくらい安心できたんだ。
これで葉月が満足するなら、とカッターを手に持った。
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