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第60話

午後1時を過ぎた頃、唯の携帯が鳴り出した。 「ゆーいっ携帯鳴ってるよ?」 「今はいい」 そういって俺を膝の上に乗せてだらだらと過ごしている唯に携帯を突きつけた。 「ダメでしょ…!ほら、出て!」 「チッ……月宮だ」 舌打ちをしてから電話に出た唯。 その姿はいつもとは違ってちょっぴりこわい雰囲気だった。 少しして、電話を終えたのか溜息をつきながら俺の髪をいじっていた。 「…仕事に行かなきゃいけなくなった」 「そっか………がんばろう唯!」 玲緒はなんとなくやる気のなさそうな唯を精一杯応援したつもりだった。 けど、その後にかけられた言葉は意外な言葉だった。 「…玲緒も行くか?」 「え、俺なんかがいってもいいの?」 その言葉に驚きながらも聞いてみると唯は小さく頷いた。 そして「大人しくしてられるならな」って、苦笑いをしてくれた。 唯は部屋に戻って数分してからダークスーツの姿になって戻ってきた。 「行くぞ」 「はーい」 玄関でリビングに向かって「いってきます」と小さく呟いてから唯の家を出た。 それから程なくしてついた呉羽組の本家。 もう雰囲気が違う。 色々な人が唯に頭を下げてあいさつしていて、やっぱり唯ってすごい人なんだなぁ、なんて実感していた。 すっごく長いように感じる廊下をどんどん進んでいってある部屋にたどり着いた。 「ここは幹部室っていう部屋だ」 そういって唯は扉に手をかけた。

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