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第67話

久しぶりに帰った俺の家。 俺が家を出て以来掃除はしていないようで少し埃っぽかった。 そんなリビングに3人が座っていた。 誰も口を開かなくて重苦しい雰囲気が流れる。 こわい、けど話さなきゃいけない。 「2人とも俺の話、きいて」 2人が頷いたのを確認してから俺は話し始めた。 「俺には、恋人がいます」 2人はちょっと驚いた素振りを見せながら、それでも俺の話に耳を傾けてくれていた。 「名前は月宮唯さんって言って呉羽組の幹部でもちろん男」 そこで兄貴は苦い顔をしてたけど、もうそんなの気にしない。 それから全てをゆっくりと話した。 唯と初めて会ったときのこと 恋人になったこと 助けてもらったこと たくさん愛してもらったこと ごはんを作ってくれたこと 守ってくれたこと 呉羽組の本家へ行ったこと 好きなものを与えてくれたこと 甘やかしてくれたこと 愛し、愛されていること。 この短い時間で自分でも驚くくらいたくさんの経験をしていた。 それは胸が温かくなるようなものばかりで、込み上げてくるものがある。 「唯は俺のこと傷つけたりしないし、脅したりもしない。俺のこと守ってくれるばっかりで…」 俺は何も返せてない、 けどその言葉は音を紡がなかった。 唯からはたくさんのものをもらっているのに、こんなに無力で何もあげられない自分が悔しい。

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