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第69話 唯side
玲緒から電話があったのは仕事が終わってすぐのことだった。
『あ、もしもし唯ですか?』
「そうだけど…玲緒?」
『あたり〜』
「どうした?」
『迎えに来て……お願い』
どこか少し元気がなさそうな玲緒の声。
何かあったんだろうかと心配になる。
「いいけど、どこにいる?」
『そうだねぇ...どこにいるんだろ、俺』
電話越しに聞こえる玲緒の声から一気にいつもの陽気さ、が消え失せたように感じた。
「…玲緒?」
『わかんない…もうわかんないよ唯』
「…落ち着け、とにかく場所を教えてくれ」
なんとか玲緒を落ち着かせ場所を聞いた。
玲緒がいるのは玲緒の家の近くのファミレスだとわかり急いで車を走らせた。
電話の向こうで聞こえた玲緒の声はいつもより落ち込んでいるような、悲しそうな、そんな声で唯の不安は大きくなっていた。
玲緒には苦しい、辛い思いをしてほしくない。
もっと頼ってくれてもいいんだけどな、なんて考えながらハンドルを強く握った。
玲緒は自分や周りに問題が起きたらそれを解決しようと必死に動く。
それ自体は良いことだと思うが、唯の存在をも忘れ、突っ走ってしまうのは少し寂しいと思う。
好きな人には甘えられたいし頼られたい
それが玲緒なら尚更だ。
でも玲緒はどこか控えめで、唯にべったりくっついてくることはあっても唯を困らせるような我儘を言うことはない。
おねだりしてる玲緒や我儘を言う玲緒も可愛いだろうな…
これからは我儘を言わせてみようと決意した。
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