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第78話 唯side

「お待たせしました」 午後の4時半過ぎ。 駅前のカフェで玲緒の兄と約束をした。 現れた人物はそれなりの身長でいて、玲緒とは違う薄い茶色の髪の毛を綺麗にまとめていた。 ピシッとスーツを着こなしていて、爽やかな印象だ。 「初めまして、玲緒の兄の逢坂美鶴といいます」 そういって名刺を渡してきた。 差し出された名刺を受け取ってから唯も名刺を渡した。 同い年くらい…か? 「月宮唯です」 「玲緒からお話は聞いています。玲緒が我儘を言ったようですみません。今後は一切迷惑のかからないように注意しますので…」 美鶴さんから放たれる言葉は玲緒への優しさで溢れていた。だけど、きっとちゃんと向き合ってはいないだろう。 「迷惑、ですか…玲緒は迷惑なんてかけてないですよ。それに我儘も言ったことありません」 「…そう、でしたか……あの、玲緒のことはもうお気になさらないでください。」 はっきりと言い放たれた言葉に戸惑いこそしたがここで退くわけにはいかない。 「玲緒を手放す気はありません」 「手放す、ですか…」 美鶴さんは少し困ったように微笑んだ。 運ばれてきてから時間が経って冷めてしまったコーヒーカップの縁をなぞっていた。

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