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第90話
*
唯と別れてから結構経った。
あの日以来唯とはもう会っていなくて、俺は唯のことを忘れてしまおうと必死になっていた。
カレンダーはもう3月の初めになっている。
葉月の受験生活もあと数日で終わりを告げ、今よりは落ち着いた生活が戻ってくる。
葉月とは相変わらずの関係だけど。
左腕の骨折はとっくに治っていた、けど怪我は増えていった。
「玲緒遊びに行こうよ…!」
翔が怖い顔で俺に話しかけてきた。
…それ、遊びに誘う顔じゃないだろ…
「うーんごめんね、今日はやめとく」
いつも通りのようでいつも通りじゃない日常。
翔にへらへらとした笑みを向けて優しく返事を返す。
「ケンカは…」
「しないよ、今日は痛くないことするからさ」
日に日に怪我が増えていく俺を心配してくれている翔。
その横でなにも言わない夏樹。
今日もケンカをしないように遊びに誘ってくれたんだろうけど、今日はダメ。
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「結城!」
翔と夏樹と別れたあと、俺は一直線に駅へ向かった。
夕方ということもあってか歩きながら楽しそうに談笑する学生たちの姿が多く見られる。
俺はそんなことを気にもせず俺に向かって広げられるその腕の中に飛び込んだ。
「おかえり玲緒」
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