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第96話 唯side
「唯さーん」
「…なんだよ」
本家の方で仕事をしていると、八坂の間の抜けた声が俺の名前を呼んだ。
「良いこと教えてあげましょうか〜」
いらいらする…
一体なんなんだ?この上機嫌は…。
いつにも増して無駄にニコニコと愛想の良い笑顔を向けられる。
ただでさえ仕事が煮詰まっていて人手が足りないというのにこいつはそんな仕事を放ってどこに行ってたんだと思わず怒鳴りたくなるのをなんとか堪えた。
「…なに?」
「じゃじゃーん!」
そういって見せられたのはスマホに映し出された1枚の写真だった。
「玲緒……」
「実はさっき玲緒くんに会ったんです」
「バイト、始めたのか」
写真に写っている玲緒は制服姿で楽しそうに客と談笑している姿だった。
角度的に隠し撮りでもしたのだろう…
「みたいですね〜、すごく可愛かったですよ〜それにしても玲緒くんには色々驚いたなぁ」
相変わらずの笑顔のまま八坂は大げさなくらいの驚く仕草をして唯を見る。
正直うざったいが、それよりも唯は最後に何気なく八坂が言ったことが気になった。
色々?
「色々ってなんだ?」
俺がそう聞くと八坂は、待ってましたと言わんばかりにニヤッとした笑みを浮かべた。
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