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第99話
翌日、玲緒は帰りが遅いと言った結城のために夜ごはんを作ってあげようと思い近くのスーパーに来ていた。
「結城は何が食べたいかなぁ」
一人で買い物かごを持ちながらそんなことをかれこれ30分は考えている。
結城はほとんど家で仕事をすることが多い。
だからいつも家事を任せがちになってしまう。
結城がいない今日は掃除、洗濯物やごはんを作って「よく頑張ったね」と褒めてもらいたい。
結城は良く玲緒のことを褒める。
家ではよく手伝ってくれるからというのもあったが褒めると玲緒が嬉しそうなをするから、という理由もあったりする。
が、玲緒はそれを知る由もない。
「そうだなぁ…野菜は弾いとこ」
結城は玲緒の嫌いな野菜を把握していて、あまり料理に入っていない。
そのかわり野菜ジュースやフルーツ、果物などは必ず食べさせる。
特に野菜ジュースは結城が玲緒のために作ってくれるオリジナル野菜ジュース。
それを玲緒が飲み終わるまでずっと横でみていて、飲み終わるまで絶対口を開いてくれない。
でも飲み終わったら優しい笑顔で頭を撫でてくれるんだ。
「頑張ったね」って
野菜コーナーの前でそれを思い出して思わず微笑みがこぼれてしまう。
そんな時、玲緒の買い物かごに大量の野菜が入れられた。
「はぁ!?ちょ、なに…」
そして息をごくんっと飲み込んだ。
忘れていた人。
いや、忘れていたわけではない。
どうしても、忘れられなかったんだ。
俺が忘れられなかった、
唯がいた。
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