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第101話
目が覚めると数ヶ月前によく見ていた景色があって俺はベッドに寝かされているようだった。
ふわっと香る甘くて爽やかな匂い。
ベッドから見えるインテリア。
柔らかくてもふもふな毛布の感触。
ここ、唯の家だ………。
それに気がついて俺は飛び起きた。
帰らなきゃ…何も言わないで出てきたから結城が心配する。
ぼんやりとしていた頭がはっきりとしてきて、体にそう命令する。
だけど、ベッドから降りようとして足首に違和感を覚えた。
ゆっくりと視線を落とすと、
足枷。
鎖がベッドヘッドに繋がれて、じゃらじゃらと嫌な音をたてていた。
「起きたか」
足枷に戸惑っているとスーッとドアの開く音がしてスーツ姿じゃない、ラフな格好の唯が立っていた。
「ゆ、唯…これ、なに?」
こわくて声が震えていた。
何から聞けばいいのか分からなかったけど、とにかく何かを聞かなければ始まらない。
それからゆっくりと足首に目線を移した。
「足枷」
「し、知ってる…なんで?なんでこんなことするの…俺はもう…」
唯のものじゃないよ、そう言おうとした。
だけど、顔を上げて見えた唯の瞳は前に向けられた優しい瞳とは違って、酷くこわい瞳をしていた。
喉がひゅっと鳴って、上手く息を吸うことが出来なかった。
…こわい、
「逃げないようにするため」
「…っ、か、帰ら、なきゃ…っ」
ゆっくり、でも確実に唯は俺に近づいてきた。
「ここにいれば良い。家にも帰ってないんだろ?」
優しい唯じゃない。
こわい…っ
「お願いっ、帰りたい…お願い唯…」
いつの間にか唯は目の前に立っていた。
目の前に立つ唯がこわくて俺は必死にお願いをした。
家に帰らせて、って
「悪いけど無理」
だけど唯は聞いてくれなかった。
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