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第108話
スーツ姿に身を包んだ唯がいつもの優しい笑顔で俺の髪の毛を撫でた。
「行ってくる」
「うん、行ってらっしゃい」
嫌そうに仕事に行く唯を見届けるために玄関まできた。
目の前でガチャリと重い音をさせながら閉まっていく扉。
この監禁から逃れるのには今しかない。
いつもは足枷でリビングなどに繋がれているのだが、今日は唯の帰りが遅くなるかもしれないからとトイレなどに自分で行けるように足枷は外され、首輪を付けられていたのだ。
首輪は窮屈だけど、行動を阻まれる足枷よりは全然マシだった。
部屋の隅にかけられた制服に袖を通す。
数週間着ることのなかった制服になぜだか少し懐かしさを感じ、とても安心した。
教科書とかは全部結城の家にあるから取りに行くのめんどくさい…いいや、なんて考えながらベランダのドアを開けた。
玄関の扉は内側からも外側からも鍵が無ければ出入りできない。
もちろんその鍵は家主である唯がもっているので、玄関からは出られない。
だとしたらベランダだ。
唯の部屋はちょっとだけ高い場所にあるけど、
下の部屋のベランダに飛び乗って行けばなんとか降りられそうだ。
正直すっごい怖いし、下手したら死ぬかもしれないけどやるしかない。
この時ばかりは自分の身体能力を信じるしかなかった。
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