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第110話

「はぁ?!お前逃げてきたのか?!」 少し暖かくなってきた屋上でお昼ご飯を食べながら3人は座っていた。 その中でも今1番大きな声を出したのは夏樹だった。 「だからそうだよって言ってんじゃん」 「か、監禁…っ」 驚きすぎている2人を横目に俺はパンを頬ばった。こういうのをオーバーリアクションっていうんだろうな。 長らく食べられていなかった、懐かしいパンの味だ…なんてちょっとだけ感動する。 「それ、やばくね?…玲緒が学校にいるってことくらい唯さんに連絡…」 そういって携帯を操作する夏樹の手を止めるべく腕に飛びついた。 「やだ!そんなことしたら俺また連れ戻されて監禁生活だよ…」 「そうだよ夏樹!玲緒が可哀想だよ!」 2人で夏樹の瞳を下から見て、俗に言う上目遣いで訴えた。 そしたら夏樹は小さい呻き声を上げて留まってくれた。 「…仕方ねえな…どうなっても知らないぞ、お前のついでにケツ掘られるとか死んでも御免だから」 「やったぁ!ありがとう夏樹!翔!」 夏樹が最後に言ったことは良く分からなかったけど、夏樹と翔にはこの上ないくらいに感謝した。 それから翔の教科書を見せてもらいながら午後の授業を受け、あっという間に放課後になった。 放課後は部活動をする生徒が多く、校舎やグラウンドにはまだたくさんの生徒が残っていた。 夏樹は巻き添えを食らうのは絶対に嫌だ、とかなんとか言って翔を無理やり引きずりながら俺を一人、おいて帰ってしまった。 玲緒は自分の席に座りながらぼーっとしていた。 外から運動部の元気な掛け声が聞こえてくる。 校舎内には綺麗な音色の曲が響き渡っていた。 しばらくグランドを眺め玲緒は立ち上がった。 帰ろう。 もちろん自分の家だ。 結城には今日、メールで謝って明日、持ち物を取りに行こう。 「よし…」 玲緒は自分の頬を軽く叩き気合を入れて教室を出た。

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