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第113話
「とうちゃーく!部屋まで送るね〜」
そんな八坂さんの明るい声で俯いていた顔を上げると唯の家があるマンションの駐車場にいた。
八坂さんは車を降りて俺の方のドアを開けてくれた。
それからエレベーターに乗って、唯の部屋がある階まで上に進んだ。
ついに来てしまった部屋の前。
どきどきとうるさい心臓をなんとか落ち着かせるように深呼吸をした。
「あー、唯さん怒ると怖いけど…玲緒くんなら大丈夫!がんばってね!」
八坂さんに突然そう言われて体が硬直した。
色々と聞き返そうとしたその時、玄関が開いて俺は不思議と口を固く閉ざした。
「あ、唯さん!玲緒くんお届けに参りましたよ〜っと」
「あぁ、ありがとな」
俺の横でそんなやり取りをする二人。
唯は八坂さんをすぐに帰そうと少し早口で喋っている気がした。
なんか……いらいらしてる…?
当たり前か…。
俺は一向に顔をあげられなかった。
「玲緒くん反省はしてるみたいなんで、あんまり怒らないであげてくださいね〜」
「…考えとく」
そんな唯の声がした後に、ぐいっと力強く引っ張られ顔を上げるて確認すると唯に腕を掴まれて家の中に引き込まれていた。
八坂さんは笑顔でひらひらと手を振り、去っていった。
「…ご、ごめんなさい…」
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