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第129話
唯と離れるのは明日。
今日は泊まっていいことになった。
だけどやることはたくさんあって、その中でも1番の難関なのが結城の家訪問だった。
俺が1人でも大丈夫って言っても唯はこわい顔して俺も行くって聞かなかった。
だから仕方なく、2人で行くことにしたんだ。
唯が車を運転してくれてもう随分経った。
結城の家があるマンションはこのすぐ先にある。
玲緒の胸は結城への罪悪感と緊張でいっぱいだった。
さっき唯から貰った指輪を撫でた。
「大丈夫だ」
「…うん」
そんな俺の様子に気がついたのか唯は俺の手に自分の手を重ねて優しくそう言ってくれた。
運転中なのにこうやって気遣ってくれて、嬉しさと好きの気持ちで潰れてしまいそうになった。
久しぶりに訪れた玄関。
なかなかインターホンを押せずにいると横から手が伸びてきて、規則的なメロディが流れた。
インターホンを押したのは唯だった。
「はいはーい!…って玲緒!無事で良かったっ…!わ、そちらの方…よりまずは入って!」
相変わらず爽やかな笑顔をした結城。
何も変わっていなくて少し安心していた。
「おじゃましまーす…。」
「おじゃまします」
「お隣さんはコーヒーでいいですかー?」
キッチンから結城の声とがちゃがちゃと音が聞こえた。
「はい、大丈夫です」
結城はコーヒーと温かいミルクを持ってきてくれて、向かいの席に座った。
「お待たせしました…玲緒、その人が別れた恋人さん?」
「あっ、うん…あの、勝手にいなくなってごめんなさい」
「大丈夫だよ、もしかしてーって思ってたし…
あ、向こうの部屋の荷物まとめておいで」
「うん!」
*
使わせてもらっていた部屋を整え、結城にお礼を言った。
それから唯のことを話して、結城にごめんなさいと謝った。
結城はもともと喧嘩していた彼氏がいるらしくて、唯のもとに帰ると言っても怒らないで許してくれた。
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