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第133話
「俺は何があっても唯と別れない」
それだけは譲れない。
兄貴と葉月に何を伝えるか考えた時に、1番最初に浮かんできたのがそれだった。
「唯が好き、大好き。唯がいるんだったら他には何も要らないよ」
「それは、家族も?」
重たい空気の中、口を開いたのは兄貴だった。
「…うん。」
家族が特別嫌いと言われればそうではないと答えると思う。
実際嫌いと思ってるわけじゃないし、俺は以前兄貴に恋心を抱いていた。
「だけどそういう大事なものは失いたくないって思うよ。欲張りだって分かってる、だから」
自分で考えて決めたこと。
「俺、強くなる」
喧嘩には頼らない。
力だけの強さじゃなくて、心の強さ。
「大切なものを失いたくないから強くなるよ」
「…そっか、偉いね玲緒は」
そういって立ち上がった兄貴は俺の隣まできて髪の毛を梳かすように撫でた。
「な、に?」
「ごめんね。兄ちゃん玲緒に意地悪してた」
意地悪?疑問に思いながら黙って兄貴を見つめるとその視線に気がついたのか兄貴は優しい微笑みを浮かべた。
「兄ちゃんね、唯さんと玲緒の関係を悪く思ったことは一度もないよ」
その言葉に驚きを隠せなかった。
じゃあ今まで俺たちはなんであんな風になってたの?
兄貴の勝手な気まぐれで、俺と唯は離れて辛い思いをしていたの?
そんな考えが頭の中を過ぎってなかなか消えなかった。
だけど、兄貴の話を聞いてその考えは全部消えていった。
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