「えぇっ！？」 俺と玲緒の今の状況を話すと八坂は目を丸くして開いた口を元に戻すことなく固まっていた。 そして言ったのは 「ありえねえ…俺だったら絶対無理！」 久しぶりに聞くその言葉遣い。 いつものへらへらとした言葉遣いが一切含まれておらず、その言葉が素なのだと分かった。 「…飛鳥と離れるなんて考えただけで震えちゃう…」 ぼーっと聞いていたその言葉にふと、疑問を持った。 「飛鳥、って？彼女か？」 「ん？彼氏だよ」 飛鳥という知らない名前が八坂の口から出てきたのにも驚いたが、彼氏がいることには口から内蔵が出そうなくらいに驚いた。 「…彼氏いたんだな」 「うんっ、すっごく愛してるよ〜！」 そういう八坂の顔は本当に幸せそうでその笑顔をみると気分は重たいはずなのに、なんだか安心したように思えた。 それは八坂の過去を知っていたからかもしれないが。 そしてそんな話をしているとガラッと突然ドアが開いて、普段はなかなか組に顔を出さない若がきた。 「…何してるの？」 白いシャツに黒のジーンズという比較的ラフな格好をした若が不思議そうに俺たちを見た。 「あ、若〜久しぶり〜！おれ〜唯さんと所謂恋バナってやつをしてたんだよ〜！」 やめてくれ八坂…若に恋バナとか言わないでくれ… 「へえ、それは楽しそうだね。俺も混ぜてほしいなぁ…唯はどんな恋をしてるのかな」 そんな八坂の話を聞いてか、若は意地悪そうに微笑んでソファに腰をかけた。 「あ、いや………」 「え、なに唯の恋は俺には言えないような話なの？」 「俺、玲緒くんと初めて会った時の話が聞いてみたいなぁ〜！」 八坂が横からそんなことを言うと、若の目がすーっと楽しそうに細められた。 「唯の相手はレオくんって言うんだね…じゃあ俺も聞かせてもらおうかな」 思ったより、１日は長くなりそうだ。