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第147話
部屋を出て廊下を歩いてると八坂さんが時折ふふふって笑い出す。
笑い出す理由がよく分からなくてちょっとこわい…。
そんなことを思いながら歩いていると突然八坂さんが止まった。
ぴたりと八坂さんにくっついて歩いていた俺はそのまま八坂さんの背中にぶつかった。
「いたた…」
「あっ、若〜!いたんですね〜」
そう言って八坂さんはにこっと愛想の良い笑顔を浮かべた。
その笑顔は、なんていうか…つくりあげたものじゃなくて多分心からのものなんだと思う。
…ていうか若って、若頭ってことだよね??
やっぱりいかつくてごつくて怖い人なのかなって思ってそーっと八坂さんの肩越しにみてみた。
そしたらそこには長身細身、という言葉がピッタリと似合いそうで爽やかな黒髪のかっこいいお兄さんって感じの人がいた。
え、と…この人が若頭さん?
「ちょっと用事が出来てね、そちらは?」
そう言って若頭さんは俺の方をみた。
もしかしなくても俺のこと聞かれてる…よね?
どうしたら良いのか分からなくて考えを巡らせていると八坂さんがそれを察したようで、紹介してくれた。
「玲緒くんですよ〜」
「…レオ、くんね…」
「唯さんの恋人なんですよ〜」
それを言うと納得したようににこっと笑って俺に手を伸ばしてきた。
「あぁ、この前のね…一度会ってみたいと思ってたんだ。俺は呉羽 柊多 でこの呉羽組の若頭。よろしくね、玲緒くん」
前に出された手を両手でぎゅっと握って、俺も挨拶をしなきゃと思い、口を開いた。
「逢坂玲緒、ですっ…えっと、よろしくお願いします…!」
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