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第152話
八坂さんはそのままスタスタとレジに進んだ。
「えっ、待ってそれ俺の…!」
「玲緒くんのお小遣いは唯さんから預かってるからね、玲緒くんに払わせたら俺どやされちゃうよ〜」
そう言って八坂さんはにこっと笑った。
そういえばさっきのパンケーキも八坂さんが払ってくれてた…
ていうか俺だってお金あるからいいのに…
唯ってばほんとに優しいんだなぁ
帰ったらちゃんとお礼言ってお金返そう。
「はい、これ」
「ありがとうございます!」
八坂さんから可愛らしい絵が描かれた袋を受け取り俺はもうご機嫌だった。
「ん〜、まだちょっと早いかなぁ」
八坂さんは携帯の画面をじーっと見つめながらそんなことを言っていた。
まだちょっと早いってどういうことなんだろう…
自分の靴先を見ながらそんなことをぐるぐると考えているといきなり八坂さんが驚いたように声をかけてきた。
「玲緒くんっ!?どうしたの??」
「え?どうもしてないです…けど」
そう、本当にどうもしてない。
八坂さんは何をこんなに慌ててるんだろう?
「…もしかして自覚してないのか…?」
八坂さんはぼそっと何かを言ったけど声が小さすぎて何も聞こえなかった。
「何か言いましたか?」
「ん?言ってないよ!…玲緒くんが寂しそうだし組に帰るかぁ〜」
それから来た時と同じように八坂さんが俺の方の車のドアを開けてエスコートしてくれた。
八坂さんは始終笑顔でやっぱりにこにこしてた。
割と遠くまで来ているようでまだ着かないから少し寝ててもいいよ、と八坂さんに言われたけどなんだか申し訳ないので起きていることにした。
だけど車に揺られているとなんだか気持ちよくて、いつの間にか眠りに落ちていた。
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