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第154話

「玲緒くん歩けないって言うから抱っこして連れてきただけだよ〜怒らないでね〜?」 「…あぁ…玲緒、こっち」 八坂さんと唯はそんな会話をしていたけど、俺の頭は唯の横にいる男の人のことでいっぱいだった。 見たことない人だ…。 まぁ、この組には見たことない人がたくさんいるんだろうけど…なんていうか…すっごい嫌な視線を感じる…気がする。 「ほら…っと」 いつの間にか八坂さんから引き剥がされて俺は唯にお姫様抱っこされていた。 ふわっと香る唯の匂いはいつもの匂いと違ってタバコみたいなものの匂いがした。 なんか…なんか………やだ… 唯は俺といる時タバコ吸わない… 唯のスーツの胸元あたりにぐりぐりと自分の顔を押し付けた。 「…どうした?」 そんなことを唯に聞かれたけどあの人がいるここで言うのはなんか嫌だった。 「ふふ、玲緒くんだっけ…可愛いね」 唯の隣にいた綺麗な男の人がクスクスと笑って、俺のことを撫でた。 なんか、馬鹿にされたように鼻で笑われた気がする…。 それに撫でないでほしい…。 「今日は唯取っちゃってごめんね、八坂と楽しんできた?」 返事はしたくなかったけど、返事をしないと感じ悪くなっちゃう気がしたから一応頷くだけ頷いておいた。 でもこの人唯にすっごいくっついてる…。 俺がこんなこと言うなんて思ってもなかったけど、ベタベタしすぎじゃないのかな… ニコニコと余裕な笑みをこちらに向けて、唯の肩に手を置いていた。 …この綺麗な人、一体なんなんだろう…。

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