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第159話
唯の膝の上で俺は正直に思ったことを唯に話した。
さっき言われた言葉を思い出す。
そうだよね、言わなきゃ唯は分からないよね
「今日の人、嫌だった…」
「今日の…あぁ、的場な」
あの綺麗な男の人、的場さんっていうんだ…呼び捨てだ…仲良いのかな…?
「中学の時からの同級生で今も仕事がらたまに会うんだよ」
「…そっか」
それを聞いて二人の関係がはっきりした。
だから、なんの心配もいらないはずなのに的場さんの嫌な微笑みが頭の中を横切ってもやもやは晴れなかった。
「何が嫌だった?」
そんな俺の心中を見透かしたように唯がそう聞いてきた。
「…っ、唯のこと、俺より、その…知ってる…みたいでなんか嫌だった…べたべた…してたし、それに俺、クスって笑われて、バカにされた気がする」
「…玲緒しか知らない俺もあるけど」
「…よくわかんない、んだけど」
「例えば…」
ドスッと押し倒されてもふもふのカーペットが俺の背中を包んでくれた。
「こんな俺、とか…」
この体制を表すなら多分床ドンと呼ばれるものだ。
恥ずかしすぎる…。
「こんなに尽くして機嫌とりに必死になるの、俺には玲緒くらいだよ」
「…ばかっ、もう嫌だ……」
そう言って顔を横に向けて唯から目を逸らせた。
そしたら唯は俺の顎をくいっともって、また前を向かされてばちっと目が合う。
「何が?」
「だからっ!……かっこよすぎだよ…」
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