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第162話

* 「水、ほしい……」 「あ?あぁ、ちょっと待ってな」 そう言ってベッドに横になっている俺の髪の毛をくしゃくしゃと撫でてから唯は寝室を出ていった。 しばらくするとミネラルウォーターといつも唯が食べるチョコを手にして戻ってきた。 「ほら」 「ありがと」 今日は疲労感が半端なかった。 それこそいつもとは比べ物にならないくらい。 今日みたいなセックスは出来ればもう二度としたくない…。 声もガラガラだし………。 ミネラルウォーターが入ったペットボトルを開けようとするけど、上手く力が入らなくて開かなかった。 思いっきり力を入れて開けよう、と深呼吸をすると手に持っていたペットボトルがするっと抜けて、すぐに戻ってきた。 ……キャップ開いてる…。 隣のベッドに座っている唯をみると何事もなかったかのように煙草を吸っていた。 もちろん俺からペットボトルを取ってキャップを開けてくれたのは間違いなく唯だ。 「…ありがと」 さりげなく優しいところが好きなんだよなぁ、とぼんやり唯をみつめていた。 煙草を吸う唯はかっこいいけど、煙草の匂いはちょっとだけ…苦手だったりする。 別に臭いとか感じるわけじゃないんだけど、苦い香りっていう感じがして辛くなってくる。 でも唯は俺とは反対の方向で紫煙を吐いてくれる。 こういうところもさりげなく俺に気をつかってくれて優しいなぁって思う。 それに唯には長生きしてほしいし…。 そんなことをぐるぐる考えていると唯が俺の頬を撫でてきた。 「…煙草、嫌か?」 まるで俺の考えを読んだかのように唯はそう言った。 怒ってたり怖い顔はしてなくて苦笑いしてる。 「…ん、ちょっとだけ…」

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