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第164話

「う、……あぁ…」 大好きな人の声で目覚めた朝。 唯はうなされているようで汗をかいて辛そうな苦しそうな様子だった。 それをみて一気に頭が覚醒した。 「ゆ、ゆいっ、おきて、ゆい、おきて!」 唯の体を揺らしながら彼の名前を呼んだ。 するとゆっくりと瞳が開いて突然ぎゅうっと抱きしめられた。 「……魘されてたよ、大丈夫?」 本当は少し息がし辛くて苦しかったけど、それは言わないことにした。 だって唯の息遣いもいつもより荒くて苦しそうだったから… 「あぁ………」 そっと胸を押して少しだけ離れた。だけど唯の腕の中にいることは変わりなくて、唯の顔を見上げてみた。 こんなに不安げな表情をした唯を見るのはもしかしたら初めてかもしれない。 なるべく優しい声を意識して唯に声をかけた。 唯は汗をたくさんかいていて暑そうだ。 少し経ってから落ち着いてきたようだったらシャワーを浴びるように言ってみよう。 「どうしたの?」 「……こわい、夢をみた」 「どんな夢?」 「…思い、出したくない」 そして再び強く抱きしめられた。 余程こわい夢だったのだろう、唯がこんなにも怯えるほどに。 そう思うと余計に気になったけど、無理やり思い出させるのは少し可哀想だったから聞かないことにした。

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