165 / 337
第165話 唯side
1人の男の子が地面に何かを書いている。
何を書いてるかは分からなくて、近くまで歩み寄った。
そこに書かれているのは高校でも習わないような難しい数式。
なんでこんな子供がそれを書いているのだろうか、と不思議に思った。
だけどその子供の顔をみて納得した。
この子は______拓斗だ。
それから目の前が真っ暗になった。
足を着いていた地面がガタガタと音を立てて崩れていく。
そんな中、地面に書かれた最後に見えたものは
『たすけて』
*
「唯、落ち着いた?」
「…あぁ、ありがとう」
久しぶりに嫌な夢をみた。
……そういえばもうそんな時期になるのか。
「ん、別に良いよ…すごい汗かいてるし服、気持ち悪いでしょ、シャワー浴びてくる?」
玲緒はそう言って俺の着替えを出してくれた。
そして俺の服をベッドの端に置いて、冷蔵庫から持ってきたらしい冷えたミネラルウォーターを渡してくれた。
まだ腰が痛くて本調子じゃないはずなのに、色々気を遣わせてしまってなんだか申し訳なくなる。
「そうしようかな………なぁ、わがまま言ってもいい?」
ベッドに腰掛けた玲緒を後ろから抱きしめた。
そんな俺に玲緒嫌な顔一つしないで背中に手を回してくた。
そのまま玲緒の肩に顔を埋めると、今度は優しく頭を撫でてくれた。
「珍しいね…いいよ、何でも聞いてあげる」
「…玲緒も、一緒がいい」
「うん、いいよ。…あ、じゃあ今日は家でゆっくりしよ?シャワーじゃなくてお風呂にしてもいい?」
そんな問いかけに力なく小さく頷くと、準備してくるねと玲緒は浴室に行ってしまった。
年下の玲緒に甘えすぎ、なのかもしれない。
でもこれはこれで良いななんて考えながらぼーっとしていた。
ともだちにシェアしよう!