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第46話 これ……あかんやつ!!〈泉水目線〉

   一季の白い指が、泉水のジーパンのジッパーにかかる。  ドッ、ドッ、ドッ……と心臓の音がやたらにうるさかった。緊張のあまり、泉水がゴクリ……と息を飲むと、一季はふと目を上げて、にっこりと微笑んだ。 「緊張しなくても大丈夫ですよ?」 「け、けどっ……俺、こんなんしてもらうん、初めてやし……」 「嫌だったら、言ってください。口の中に出してもらっても構いませんから」 「くっ、口っ……!? いや、そんな……ッ」  そう言ってとろけるように甘い微笑みを浮かべながら、一季はジッパーを最後まで下ろした。ペニスの形がくっきりと分かるほどにがっつり盛り上がったボクサーパンツを見て、一季がほぅ……とため息をついている。 「あっ……あの、すみません、俺、一人でこんな盛り上がってっ……!!」 「一人で、じゃないです。僕だって……すごく、興奮してます」 「へ…………」 「ちょっとだけ、腰、浮かせてもらっていいですか? ジーパン、ちょっと下げたいんですけど」 「あっ、は、はいぃっ……」  震え声でそう応じつつ、泉水は素直に腰を浮かせた。すると一季は器用に、泉水のジーパンを尻の下あたりまでずり下げる。  すると、いつにも増して長大に成長した泉水のそれが、煌々と灯った明かりの下で露わになる。下腹にくっつく勢いでそそり立つそれを見て、泉水は恥ずかしいやら申し訳ないやら恥ずかしいやらで、思わず顔を覆いたくなったのだが……。 「ぁん……スゴい……」 「えっ」  ハァ……と、一季が感極まったようなため息を漏らしている。逸らしかけていた目線を、恐る恐る股間の方へ戻すと、一季が赤く熟れた唇をぺろりと舌なめずりしている場面が見えた。それを目の当たりにしただけで、我慢汁がとぷんと溢れた。 「……一季くん……ほんまに、いいん?」 「いいも何も…………スゴイなぁ……ほんとうに、大きいですね、泉水さんの」 「っ……あっ!」  一季は泉水の脚の間に身を屈めると、躊躇うことなく竿に触れ、軽く扱いた。  ジーパン越しでさえイキかけていたというのに、直に指が触れている。しかも、間近で凝視されながら、ペニスを可愛がられている……この今の状況も、恥ずかしいやら嬉しいやら気持ちいいやら期待に胸が膨らむやらで、泉水はそろそろ何が何だか分からなくなってきていた。  すると一季が、唇をそっと開いた。そしてそこから小さく舌を覗かせると、鈴口から溢れに溢れている先走りを、ぺろ……と味わうように舐め取った。  ――ああ……っ♡ うああああ……っ……!!! うわ、ああああっ…………やばい、なんこれヤバイっ……!! 一季くんが、俺の、俺のぉぉぉぉぉおおおお……!!! 「ふっ……ぅ、う! いつき、くんっ……!」 「はむ……ン……」 「あ、あ、っ……」  丁寧に丁寧に泉水の先端を舐めるうち、一季の舌の動きも大胆になってくる。鈴口をなぞるように舌先を這わせたかと思ったら、カリ首のあたりまでぱっくりと口に含み、口内でねっとりと舐め回される。  一季の中はあたたかく、たっぷりと唾液を含んだ粘膜の感触が凄まじく気持ちがいい。泉水は必死に奥歯を食いしばり、間抜けな喘ぎ声や、せり上がる射精への欲求を、必死でこらえた。 「はァっ……いつきくん……めっちゃくちゃ、気持ちええ……ッ……」  泉水は震える手で一季の髪を撫で、掠れた声でそう言った。気を抜けば、うっかり口内に出してしてしまいそうだ。なんて淫らな快感だろう……と、泉水は射精を堪えるために、必死で難しいことを考えようとした。  すると一季は魅惑的な上目遣いで泉水を見つめながら、今度はぱっくりと、泉水のモノを飲み込んで……。 「ん、うッ…………!!」  ――は、は、入ってる……!! 一季くんの口の中に、俺の、俺のッ…………!!! あ、あかん、まじでこれ、あかん、あかんやつ…………!!! あ、も、あかん、むり、あぁ、あ、っ……!!!  与えられる快感に全細胞が痺れ、はっ、はっ、と呼吸が速くなる。  一季は目を閉じ、頬を赤らめ、熱心に泉水の肉棒をしゃぶっている。その絵面の凄まじいいやらしさと、一季が嫌がりもせずにこんなことをしてくれているという感動と感激で、泉水はもはやまともな思考などできなくなっていた。 「ん、んっ……いつきくん、……ハァっ……はぁっ……」 「……気持ちいいですか?」  様子を窺うように、一季は一旦口からペニスを引き抜いた。どっくんどっくんと逞しく脈打ち、唾液で濡れた己の性器と、一季の唇が、透明の糸で繋がっている。 「……はぁ……も、もう、めちゃくちゃ、きもちいい……です」 「本当ですか? 嬉しいな」  薄汚れた欲望の化身をなおも手でゆっくりと扱きながら、一季は妖艶に微笑んだ。普段とは違った一季の表情に、ドッキドッキと胸が暴れる。 「けど、けど、そろそろ、もう……もうっ……!」 「イキそうですか?」 「え、えと、そう、そやねん……さっきからもう、ずっと……」 「じゃあ、出していいですよ? 我慢しないでいいんですから」 「ええええっ、でも、でも……!!」 「僕、泉水さんの味、もっと知りたいです」  一季は陶然とした口調でそう囁くと、もう一度、ぱくりと泉水のペニスを咥えた。そしてさっきよりもぐっと深くまで、泉水のそれを飲み込んで……。  ――えええええ!? ちょ、ちょ、まって!! あかん、あかん、喉突いてまうやん、こんな、こんなぁぁあああ!!!  だが、身体は欲望に正直だ。気持ちよすぎて、もっともっとと先を望んでいる。  竿に絡みつく舌の動き、ちょっと速度を上げて根元を扱く一季の手、そして、きゅ、きゅっと喉の奥で先端を締め付けられるえもいわれぬ気持ちよさ…………泉水は遠慮を忘れて、一季のされるがままになっていた。 「あ、あ……っ! いつきくん、も、あかん、いく、でるからっ……あ、あかん、あかんてっ……!!」  いよいよ射精が近くなり、泉水は喘ぎ喘ぎ一季の動きを止めようとした。だが、一季はこれまでよりも激しく泉水を攻め立て、絶頂を煽るのだ。  ――も、むり、あ、あ、あっ、も、あかん、あ……ッ……イく、イくっ…………!!! 「ん、っ、くっ…………ぅ……!!」  そして泉水は、一季の口内で絶頂した。  びゅる、びゅくっ……と、申し訳ないほどに激しく射精してしまった。恐らく、相当量の精液が一季の喉の奥へ……。  案の定、数秒ののち、一季がごほっと噎せてしまっているではないか。射精後の甘い痺れにじんじん脳みそをやられながらも、起き上がった一季の背中を大慌てで撫でにいく。 「ごめん……!! 一季くん……ごめ、ごめんな! ティッシュ、ここあるから、出して……!!」 「けほっ……すみません、全部、飲みたかったんですけど」 「エッ………………?」  一季が、何やら信じがたくいやらしいことを言っている…………? と、泉水は思わず呆然としてしまった。  一季は口を拭うと、ちょっと気恥ずかしげに目を伏せた。そして小さな声で、「……すみません、引きましたか?」と言った。 「い、いやいやいやいやそんなことないです!! ……俺、初めてやし、ほんまにこんなんしてもろてええんやろかって思ったけど……」 「ですよね……ごめんなさい、急に」 「いやいや!! 全然!! だって、むっちゃ気持ちよくて……エロくて……もう、最高でした……」 「泉水さん……」  いそいそとペニスを仕舞い込む泉水を見て、一季がふわっと微笑んだ。つい先ほどまでの凄まじい色香がなりを潜めて、いつもの一季が戻ってきたような空気感である。  泉水はちょっとホッとした。妖艶な一季もすこぶる魅力的だが、こうして穏やかに微笑む一季を目にすると、やっぱり安心するのである。もう28歳なのに……と思うと、つくづく、己の純情ヘタレっぷりが残念である。 「あ、あの……一季くんは……いいんですか? その……」 「あ……はい。僕は……口でして、満足しちゃったっていうか」 「ま、まじすか……。すごい……」 「あっ……ひ、引かないでくださいね。あの……僕、誰にでもこんなことするわけじゃないんです、あの……だからその……」 「え、えと……大丈夫です。一季くんはそういうタイプじゃないて、何となく分かってますので……」 「あ、ありがとうございます……」  これまでの一季の経験談を、ふと泉水は思い出す。  一季はずっと不感症で悩んでいたし、基本的に控えめな性格だ。そんな一季が、誰にでも積極的にこんなことをするとは思えない。  あの同窓会を経た今だからこそ、一季は苦しんだ過去からさっぱりと抜け出せたのだろう。そして今、こうして自ら泉水を求めてくれるようになったのだろう……と、自然と泉水はそう思えた。 「あの、お腹空きませんか?」 「え? ああ……そういえば、コーヒーばっか飲んでて、夕飯食ってへんな……」 「でしょ? 僕もお腹すいてきちゃって。何か作りますね」 「あ、ありがとう……。ごめんな、い、色々やってもらってばっかりで……」 「いいえ、いいんです。その間に、シャワーとか、浴びますか?」 「あ、うん。ほな、ちょっと着替え取ってきますわ」 「はい」  にこにこと柔らかな微笑みを湛える一季を見ていると、きゅんきゅんと胸が高鳴り、身体中が幸せでいっぱいになっていくのが分かる。  ほくほくとした気持ちに励まされ、今度は泉水のほうから、一季の額にチュッとキスをした。

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