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〈後〉

  「えーと……あの、……大丈夫ですか?」 「んぇ〜〜〜? 何が?」 「何がってその……えーと……んっ……ぁ」  そうこうしているうちに、泉水の唇が一季の首筋に触れた。夜風に当たっていたせいか、かすかに冷たく乾いた唇の感触に、中途半端に高ぶっていた肌がふるりと冷やされる。 「っ……ん、泉水さん……」 「俺ぇ〜〜、一季くんのことほんっっまに好き、めっっっっちゃ好きやねん♡ 一生幸せにしたいくらい好きやねんほんま結婚したいでほんま……ほんま……結婚しよ?」 「い……泉水さん、大丈夫ですか?」 「俺なんかの童貞もらってくれて、ほんっっまにありがとう♡」 「ど、どういたしまして……」 「はぁ……かわいい、一季くんめっちゃかわいい……なんやエロいことしたい……セックスしぃひん?」 「えっ?」  ――セックスって言った!! いつも恥ずかしそうに小声で言うのに、今日は普通に言った! すごい……! 「俺、エッチなことされてる時の一季くんも、め〜〜〜っちゃ好きやで♡ ハァ……すき……」 「ふぅ……ッん」  一季が驚愕している間にも、がばっと泉水が覆いかぶさってくる。ちゅ、ちゅっ……とリップ音を響かせながら首筋を辿る唇と、シャツの中に忍び込んでくる冷たい指先に、一季は思わず声を漏らした。冷たさと、くすぐったさと、甘い快感に肌が震えて、あっという間に熱が上がっていく。 「泉水さん……酔っ払うと、こんなになっちゃうんですか……?」 「酔う〜〜? あっははっ、俺こんくらいじゃ酔わへんよ〜〜〜〜……フゥ……あったかい、いい匂いする……」 「っ……ぁん、いずみさんっ……」  部屋着の長袖Tシャツをするするとたくし上げられ、敏感な乳首をれろれろと舌先で転がされる。指先は冷えているのに、泉水の舌はとろけるように熱く淫靡だ。一季は身を捩って善がりながら、泉水のワイシャツをギュっと掴んだ。 「ん、んっ……ぁ」 「はぁ……かわいい……一季くんのおっぱい、めっちゃかわいい……ハァっ……」 「お、おっぱい……とか言う……」  照れ屋の泉水とは思えないほどに大胆な(?)発言だ。驚きを通り越して、一季はだんだん可笑しくなってきてしまった。泉水ほどではないにせよ、一季も夕方からビールやワインを飲み続けていたため、そこそこに出来上がっているのである。酔っ払った泉水につられるように、ぽわぽわとテンションが上がってきてきた。 「ふふ、あははっ……」 「どなしいたん?」 「ううん、今日の泉水さん面白い。ねぇ、キスしたい」 「エヘッ、ええよ、しよか〜〜!」  腕を伸ばして一季が誘うと、泉水は照れることなく甘くも爽やかな笑顔を浮かべ、すぐさま一季の唇にキスを降らせた。一季の口内を味わうように愛撫する泉水の舌に舌をすり寄せ、甘い唾液を絡め合う。  貪り合うように唇を合わせて、吐息さえ飲み込むような激しいキスを交わしていると、部屋着のズボンの中に、泉水の手が遠慮なく入り込んできた。 「ふぅっ……ンんっ……いずみさ……」 「もうめっちゃ硬くなってるやん……ッ! めっちゃかわいい、かわいいのにエロいとかもうほんま最高♡」 「だ、だって、泉水さんのこと考えながら、待ってたから……」 「俺のこと?」 「ぁ、んっ……そう、ですよ? 泉水さんとセックスすることばっかり考えてたから……もう僕、こんな……あッ」  あっさりと下着の中にまで入り込んできた泉水の手に、ペニスをゆるゆると慰められる。とっくの昔に先走りでとろりと濡れてしまっていた一季の先端を親指で撫で回され、一季はビクビクっと身悶えた。 「あ、あっ……あ、あん」 「俺とセックスすることばっかり考えて……? も〜〜〜〜〜一季くん、めっちゃエッチや〜〜ん! めちゃ萌えるわ〜〜燃え滾るわ〜〜〜!!」 「もえたぎる……」 「ほなこっちも、早く触って欲しいやんな……?」 「わっ……」  雄々しく微笑んだ泉水によって、するりと下が脱がされる。いつもなら、「ぬ、脱がせていいですか?」とおずおず許可を求めてくる泉水であるのに、今日はえらく積極的かつ強引だ。一季のM心をじわじわと刺激する泉水の手つきに、きゅんとお尻の中がひくついてしまう始末である。  ワイシャツの袖を抜き、逞しく引き締まった身体を露わにする泉水を目の当たりにして、ドキドキと胸まで苦しくなってきた。 「……すぐ、挿れていいですよ? もう、自分でしたから……」 「えっ、ほんまに? けど随分待たせてしもたから、もう一回じっくり慣らしたほうがいいんちゃう……?」  そう言われるやいなや、突然ぐっと脚を持ち上げられ、あっという間にあられもない格好にさせられてしまった。  煌々と灯った明かりの下で、自分で拡げたばかりのアナルも、勃ち上がったペニスも丸見えだ。一季は羞恥のあまり顔を真っ赤にしながら、「ちょ、ちょっと待ってください! こんな格好……!」と力なく抵抗した。  しかも泉水はなんの躊躇いもなく、一季の窄まりに舌を伸ばしてきたではないか。あまりのことに声も出ず、抵抗していたことさえ忘れてぽかんとしてしまった。  ――エええええッ…………!!?? い、泉水さんが、あ、あ、あ、アナル舐め……ッ……!!?   どうしてしまったことだろう。普段の慎ましやかな(?)泉水なら、自ら進んでこんなことをするはずがない。酒の力とはなんと凄まじいことかと一季は仰天するばかりである。  唾液で濡れた舌が、これから泉水を受け入れる場所を、ねっとりと這い回る。丁寧に綺麗にしたとはいえ、まさか泉水にそんなところを舐められるとは想像だにしたことがなかった。しかし……。  ――ぁ、ぁっん……な、なにこれ……なんだこれ……!! めちゃくちゃエロい……きもちいいよぉ……っ……!! 「ぁ、あっ……ぁん……スゴイ……っ」  ぬっ、ぬっ……と舌が出入りする感触があまりにもいやらしく、時折ふきかかるあたたかな吐息に、びくびくンっと腰が跳ねてしまう。浅いところをぬちぬちと出入りし、時折焦らすように窄まりを舐め回す泉水の舌が、水音を滲ませながら淫らにうごめいている。  他ならぬ大好きな泉水に、こんなにも破廉恥なことをされているという興奮と快感に、一季はすっかり翻弄されてしまっていた。 「あ、アっ……なめるの、スゴイ…………ぁ、ンっ……きもいちいぃ……きもちいよぉっ……」 「ずっとしみたかってん、こういうの……ハァ……いつもいつも頑張って、ココで俺のこと気持ち良くしてくれるし……」 「はぁっ……ァっ……、いずみさんが、そんなことするなんて……ッ……ァ、あんっ……いっちゃうよぉ、……ンんっ……」 「イくのはあかん、だめ」  ちゅく……っと、仕上げとばかりにリップ音が響き、泉水がふと顔を上げた。拳で自分の口元を拭いながら、ヘロヘロになった一季を見下ろす猛々しい眼差しに、ぎゅぎゅんと興奮度が上がっていく。 「清純で上品な顔してはんのに、エッチな身体してはるとこも、俺、めっっっっっちゃ好き。めっっっっちゃ最高」 「えっちなからだ…………あ、ありがとうございます……」 「ココに挿れたら、もっとかわいくなるとこも、めっちゃ好きやで」 「あっ……」  とろ……と秘部を濡らすローションの感触にさえ、ぞくぞくと性感をくすぐられる。そして目の前で、泉水がスラックスの前を寛げて、雄々しく上を向いた魅惑の怒張にコンドームを装着している麗しい光景にも、興奮を禁じ得ない。 「ふぁあ……おっきぃ……早く欲しい……」  ため息交じりに思ったことを素直に口にすると、泉水は一季を見下ろして、うっとりするほど優しい笑顔を浮かべた。そして一季の膝頭を手のひらで包み込みながら、ぬぷん……とすぐさま挿入を始めた。  すっかり熟れてとろけたアナルに、泉水のカリ首がずぷんと分け入ってくる感覚は、何度経験しても身震いするほどに気持ちがいいのだ。不感症であったことが嘘のように、泉水から与えらえる熱量は一季の快感を揺さぶって、心まで幸せに満たしてくれる。 「あッ……んんっぅ……んんっ……♡」 「ハァ…………もう、ほんっまに……めっちゃ気持ちええ……はぁ……っ」 「いずみさん、ぼくも……っ。……ぁ、あっ……いずみさんがはいってくるとき、すごく、すき……」 「へ……ほんま?」 「もっとおく、きてください……」  一季の誘惑に煽られたのか、泉水の腰が急に激しく動き出す。両足の膝裏を掴んで脚を開かされたまま、ぬちゅ、ぬちゅっと泉水の雄芯が一季のアナルを出入りする。その生々しく淫らな感覚に内壁は痺れ、突き上げられるたびに、一季は高らかに甘く啼いた。 「ぁ、あん、ァっ、あぅ、ン、んっ、あ」 「ほら、またそういうかわいいことばっか言うっ……! そういうこと言うから、俺、いっつもいっつも一人で盛り上がって、止まらへんくなるんやで……ハァ……はぁァっ……」 「だって、いずみさんとえっちするの好き……すきだからっ……ァ、あっ……ァん」 「も〜〜〜〜かわいすぎるやろどこの大天使やねんんんんん……! ほんま、一季くんと出会えて、ホンッマに俺、幸せすぎて……!」  泉水のピストンが荒っぽくなり、一季は背中をしならせて枕を握りしめた。おまけに、トロトロとトコロテン状態のペニスまで同時に扱かれて、溢れんばかりの快感に全身が震え、涙まで溢れてくる。 「や、やぁっ……! も、そんなのだめ、イっちゃう、いっちゃうから、……ぁ、あっ……!」 「いつもより早いんちゃう? 気持ちいいん……?」 「きもちぃぃ……! 気持ちよすぎておかしくなっちゃう……はぁっ、イくっ、いっちゃう……ンンっ……!!」  絶賛絶頂中だというのに、泉水はさらに身を乗り出して、敢えてのように激しく腰をぶつけてくる。快楽で全身が飽和状態なのに、さらなる快感を叩きつけられ、訳が分からなくなってしまうほどだ。  一季が「ぁん、らめっ……も、アっ……!! きもちいいの、だめ……アっ……いずみさん、スゴイよぉっ……!!」と涙ながらによがり狂っていると、泉水の表情にもだんだん余裕がなくなってきた。眉間にしわを寄せて唇を引き締めつつ、色っぽく声を漏らしつつ腰を振っている。 「あ〜〜〜もうかわいすぎて頭おかしくなりそうやねんけど〜〜!  ハァっ……あかん、気持ちよすぎて俺もイキそ、早すぎる、あかん……っ……ん、ぅ……!!」  びゅくっ……と体内で泉水の精液が迸る。一季にキスをしながら腰を震わせる泉水の身体を両手両足で抱きしめながら、一季もまた夢中になって泉水と舌を絡めていた。 「ハァっ……はぁ…………あかん、はやすぎ……はぁ…………ん? あれ?」  肩で息をしながら己の早漏を嘆く泉水の瞳に、ようやく理性が戻ってくる。  薄手のシャツ一枚をあられもなく乱し、四肢を広げて泉水に組み敷かれている一季を見て、泉水はゆっくりと目を瞬いた。 「あ…………あれ、俺……」 「……ん……ハァ……泉水さん、賢者モードですか……?」 「えっ、あの……俺、なんやむちゃくちゃなことしてしもたような気ぃすんねんけど……??? あっ……あの、俺っ……!?」  一回射精して冷静さが戻ったのか、泉水は挿入したままの己のペニスや、涙に濡れた一季の顔を見て青くなった。しかし一季はすぐさま泉水の首を引き寄せディープキスをして、うっとりと優しく微笑んだ。 「ううん、すっごくえっちでかわいかったですよ? 酔っ払い泉水さん♡」 「っ…………な、なんてことや……!! せっかくのクリスマスに、こんな……ッ……!! 酔うて一季くんを襲うなんて……!!」 「あはっ、襲われてないですよ。緊張しすぎて酔っ払っちゃったんですよね?」 「う、うう……すみません! ほんま情けなさすぎるわ……穴があったら入りたい気分やで……」 「もう入ってますけどね」 「アッ……ほ、ほんまや」 「でも、僕嬉しかったです。そんなに真剣に考えてくれてたんだなって」 「一季くん……」  もう一度キスをせがむと、泉水は小さく息をついて苦笑しつつ、チュッと優しく唇を重ねてくれた。  大きな手で髪を梳かれながら、ゆったりと唇を重ね合わせているうち、再びむくむくと泉水の屹立に力が戻る。 「ぁ、あん……また、おっきくなった……」 「もっかいしてもいい……? 今度はちゃんとしたいっていうか……」 「ふふ、ちゃんとなんて思わなくてもいいですよ。泉水さんのセックスは、いつだって最高ですから」 「い、一季くん……。も〜〜〜甘やかしすぎやで、俺のこと」 「へへっ、だって本当のことですから。……ねぇ、早くもう一回、しませんか?」 「…………ふぐぅ…………かわいい」  涙目で俯く泉水の頭を撫でながら、一季は軽やかな笑い声を上げた。  つけっ放しのクリスマス特番からポップなクリスマスソングが流れる暖かい部屋で、二人は改めてセックスに励むのであった。  クリスマス番外編 ・  おしまい♡

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