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「犬みたいに這いつくばって食べさせるわけにはいかないからね。口、開けて?」 これも犬とほぼ同じだろーが。 壱也は出かかった言葉を喉奥に押し戻して吉崎の言う通り口を開いた。 ゆっくりと口の中に入ってくる、ほんのり甘い味。 噛んで飲み込むと次を差し出してくる。 しばらくそれの繰り返し。 細長い指だった。 たまに唇に当たり、噛み千切ってやりたい衝動に駆られたが、堪えた。 パンを食べ終わると吉崎は牛乳パックにストローを差して壱也に傾けた。 喉が渇いていた壱也は躊躇せず口に含む。 「急がなくていいから」 ふと、壱也は口を離した。 「どうかした?」 吉崎が顔を覗き込んでくる。 壱也は慌ててストローをまたくわえた。 何の抵抗もなく吉崎が差し出してきた牛乳を自ら飲んでしまった。 これじゃあ、本当に、犬だ。 人格なんてあったもんじゃない。 ……くそ、俺はなんでこんな……。 吉崎には征服者を気取る節がない。 それが却って壱也のプライドを傷つける。 堪らなかった。 殺されるよりマシか。 壱也はそう思うようにして自分の苦悩を紛らわせる。 横目で盗み見てやれば吉崎はデスクで本を読んでいた。 やっぱり普通じゃない。 友達はいつものようにどこかに集まって下らない話をしているだろう。 親父は会社か。 母ちゃんは買い物か。 兄ちゃんは彼女と遊んでるか。 みんないつもの日常を過ごしている。 恐らく、こいつも。 俺だけが異常事態にはまっている。 「どうすれば……俺を自由にしてくれんだよ」 吐き出した言葉に吉崎は返事をしない。 壱也はベッドに顔を伏せた。 くそ、無視かよ。 何が目的なんだ。 頭が痛い。 「つらそうだね」 顔を上げると吉崎がベッドのそばに佇んでいた。 「こういう事態を招いた張本人にでも電話してみる?」 「え」 吉崎の右手にはナイフではなく壱也の携帯が握られていた。

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