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マンションの角部屋。
静かな通り、自分の知らない場所。
吉崎は壱也が寝ている間にナイフをどこかに仕舞い、用事を済ませているようだ。
食事の調達、入浴、トイレ……。
壱也は一日の大半を眠って過ごしているのでそれは可能だった。
疲れているのか。
睡眠薬でも飲まされているのか。
壱也にはわからない。
わからなくても別によかった。
脱走だとか助けを求めるとか、面倒くさい。
死なないでいられるのなら、まぁ、耐えられる。
父親以外の家族が心配し始めるのはまだ先だ。
何せ壱也の無断外泊期間は最長一ヶ月なのだから。
いつまで経っても慣れないことがある。
「あ……っ」
指を捻り入れられて壱也は一瞬息ができなくなった。
心臓が破裂しそうになる。
「時夫さん、聞こえます?」
吉崎はベッドに上がらずに床に座っていた。
壱也の片足を肩に担ぎ、指を先へ先へ進めようとしている。
勃起したペニスの濡れた部分を舐めながら。
「貴方の息子の壱也君の声、可愛いですね」
舌を伸ばして弄んでいたのが、急に口を窄めてくわえたり、緩く歯を立てたりと、吉崎は巧みに壱也を苛む。
壱也はつらかった。
この時の吉崎は怖い。
表情も態度も普段と差異はない、しかし、彼は完全に壱也を壱也として見ていない。
「二度目。射精しましたよ。でも、まだ……まだ切らせませんよ」
入れた指はそのままに吉崎が携帯を携えて這い上がってきた。
「何か言うことある?」
問いかけられて壱也は首を左右に振った。
「じゃあ、口、開けて」
恐々と開かれた壱也の唇に吉崎は唇をかぶせた。
生温かい舌が激しく蠢いて壱也の口腔をくすぐる。
唾液が混ざって淫らに鳴った。
壊れている。
壊れている人間に犯されて喘ぐ自分はバカだ。
ことが終われば壱也はいつもそう思う。
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