13 / 27

3-4

マンションの角部屋。 静かな通り、自分の知らない場所。 吉崎は壱也が寝ている間にナイフをどこかに仕舞い、用事を済ませているようだ。 食事の調達、入浴、トイレ……。 壱也は一日の大半を眠って過ごしているのでそれは可能だった。 疲れているのか。 睡眠薬でも飲まされているのか。 壱也にはわからない。 わからなくても別によかった。 脱走だとか助けを求めるとか、面倒くさい。 死なないでいられるのなら、まぁ、耐えられる。 父親以外の家族が心配し始めるのはまだ先だ。 何せ壱也の無断外泊期間は最長一ヶ月なのだから。 いつまで経っても慣れないことがある。 「あ……っ」 指を捻り入れられて壱也は一瞬息ができなくなった。 心臓が破裂しそうになる。 「時夫さん、聞こえます?」 吉崎はベッドに上がらずに床に座っていた。 壱也の片足を肩に担ぎ、指を先へ先へ進めようとしている。 勃起したペニスの濡れた部分を舐めながら。 「貴方の息子の壱也君の声、可愛いですね」 舌を伸ばして弄んでいたのが、急に口を窄めてくわえたり、緩く歯を立てたりと、吉崎は巧みに壱也を苛む。 壱也はつらかった。 この時の吉崎は怖い。 表情も態度も普段と差異はない、しかし、彼は完全に壱也を壱也として見ていない。 「二度目。射精しましたよ。でも、まだ……まだ切らせませんよ」 入れた指はそのままに吉崎が携帯を携えて這い上がってきた。 「何か言うことある?」 問いかけられて壱也は首を左右に振った。 「じゃあ、口、開けて」 恐々と開かれた壱也の唇に吉崎は唇をかぶせた。 生温かい舌が激しく蠢いて壱也の口腔をくすぐる。 唾液が混ざって淫らに鳴った。 壊れている。 壊れている人間に犯されて喘ぐ自分はバカだ。 ことが終われば壱也はいつもそう思う。

ともだちにシェアしよう!