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4-1
昼夜問わず壱也は惰眠を貪る。
その日、目覚めた瞬間、壱也は飛び起きた。
定位置にいた吉崎に不安げに視線を投げかけた。
「……なんで」
「何も変わらないから」
彼の手元には壱也の手首を拘束し続けてきた手錠が転がっていた。
「少しは楽になるかと思ったら……駄目なんだ」
だってあの人の顔が見えない。
何だか、もう……わからなくなってきた。
「それさ……間違えたんだよ」
「何を?」
「親父にとって大事なモン」
俺を大事にしてるなら警察にとっくに通報してる。
俺は助けられてあんたは逮捕されてる。
だけど警察なんて動いてない。
「親父が一番大事にしてんのは自分なんだよ」
地位とか世間体とか、そういうモンを捨ててまで俺を助けたくはないわけ。
俺じゃなくて親父自身を拉致るべきだったんだ。
「……そうだね」
「別にあんなんに縛られなくたって……もう忘れたら? きつくね?」
壱也は必死だった。
吉崎の寂しそうな表情を見るのは耐えられなかった。
黙って壱也の言葉に耳を傾けていた吉崎はフフ、と小さく笑った。
「優しいところもお父さんに似ているね」
親父なんかのどこがいいんだよ。
「似てねぇよ、いちいち比べるな!!」
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