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寒すぎる。
何日かぶりの外。
風が冷たい。
空は晴れ渡り、日差しはこれ以上ないくらいに眩しく澄んでいる。
駅が見えてきたところで壱也は今やっと背伸びをした。
-楽しかったよ。でも、本当にごめん。本当に……。
謝るなよ。
謝って全部ナシにするつもりかよ。
-時夫さんにも謝っておいてくれる?
嫌だよ。
あいつになんか言わねー。
何一つだって教えねー。
壱也は虚空を睨みつけた。
吉崎がくれたシャツとセーターはサイズが合わず大きかった。
彼のものだったのだろう。
洗濯仕立ての清潔な匂いがした。
バカみたいだ。
あいつにとってこの数日間はなんだったんだ。
好きでもないガキを犯して、その世話をして。
楽しかった、だって?
そんなのがほしくて監禁したんじゃねーだろ。
壱也は強く拳を握った。
切符売り場の前に立っても、吉崎から返してもらった財布をポケットから取り出す気にもなれない。
少年は踵を返して駅を離れた。
空腹だったのでコンビニで調理パンと飲み物を買い、通りがかった公園で食べることにした。
ベンチに座って包装を破る。
その時、壱也は思った。
あいつもあのコンビニで買っていたのだろうか。
自分で食べんの、久々。
風呂、トイレ、性欲、すべてあいつの手を借りた。
携帯を手にしてみる。
誰に電話をするでもメールを打つでもなく壱也はそれをただ見つめた。
「哀れな奴」
楽しかった。
そう言ってもらえて光栄なのかも。
親父と別れて、多分、あいつは「楽しみ」を忘れていただろうから。
だけどこのままだとあいつはどうなる。
壱也は来た道をそのまま戻った。
マンションに到着し、エレベーターを降りて吹き曝しの通路を突き進むと角部屋の前で止まり、チャイムを押さずにドアノブを掴んだ。
鍵はかかっていなかった。
寝室へと直行して二度目のドアを開く。
吉崎が驚いたようにこちらを見ていた。
「逃げんのかよ」
彼は目を瞑って首を左右に振った。
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