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青く霞む空。 すっかり葉桜となった並木道。 始業式が済むと友達とファストフードで昼食を食べ、カラオケに行く一同と別れ、壱也は自宅への帰り道についた。 清々しい風が吹き渡る。 春休み中に染め直したばかりの髪が靡く。 去年、クラスメートに開けてもらった両耳のピアスが暖かな陽光を反射してきらりと光った。 薄っぺらな通学鞄を小脇に抱えた壱也は大胆に欠伸をした。 家までもう少し。 イヤホンから流れる音楽をつい口ずさんでしまう、そんな穏やかな陽気に満ちた昼下がり。 壱也は一人の男と擦れ違う。 並木道を抜けて住宅街に入ったところだった。 数歩進んで、張り巡らされた電線の下、壱也は立ち止まる。 振り返ると。 すでに立ち止まっていた男がこちらを見つめていた。 微笑した男の唇が動く。 音楽で掻き消されるはずの声は壱也の胸に真っ直ぐに届いた。 あの日、父親と吉崎が再会した夜。 明け方に帰ってきた時夫はリビングで待っていた壱也に一言、言った。 「殴っていいぞ」 壱也はそうさせてもらった。 二発目の拳は「調子に乗るな」と言われて止められたが。 「親父が一番大切だったのって、あいつなんだろ」 それには無言を通された。 下らねー。 なんで自分の本音に嘘をつくんだろう。 一年後、監禁されていたマンションに行ってみると部屋には別の住人が住んでいた。 二年後、父親に彼の故郷はどこかと尋ねてみれば。 「復讐でもするつもりか」 「親父には関係ねぇ」 父親は首を左右に振った。 ケチ、まだ好きなんだな、きっと。 三年後、放課後の教室でクラスメートから両耳にピアスを開けてもらった。 そして。 「夢じゃないよ」 壱也は吉崎と再会した。

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