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「進級おめでとう」 「どーも」 「高三か。髪、前よりも派手な色になったね」 「そ?」 「ピアスも開けてる」 「去年、友達に頼んだ」 「本当、似てないね」 中古の軽自動車の運転席に着く吉崎はそう言ってペットボトルの水を飲んだ。 助手席に座る壱也は、彼に買ってもらったパックのアイスティーをストローで飲む。 飲み物を買ったコンビニの駐車場に車を停めたまま、二人はありふれた会話を交わしていた。 「時夫さんは元気にしてる?」 吉崎は無精ひげを生やしていた。 お洒落でもなんでもない、本当に髭剃りをさぼって伸びてしまった印象を受ける。 髪も伸びていた。 スーツではなく上下色あせた作業着を着ている。 ずぼらな外見だが、清潔感を伴って見えるのはやはり生まれ持った端整な顔立ちのおかげか。 「うん。相変わらず忙しいっぽいけど」 「よく体を壊さないね、あの人は」 「あのさ、仕事の途中とか?」 「ああ、この格好? あんまり私服がなくて。普段も仕事着を着てるんだ」 「へぇ」 「彼は病気してはいないんだね」 様々な客がコンビニに出入りしている。 磨かれたボンネットに街路樹の葉が次から次に舞い落ちる。 「俺、連絡してみよーか」 「え?」 「あんたが会いにきたって。そしたら、仕事早めに切り上げて帰ってくるかも」 「そんな必要ないよ」 僕は君に会いにきたんだよ。 「あの時、謝っただけで。肝心なことを伝えていなかったから」 吉崎は助手席で驚いている壱也へ顔を傾けた。 「ずっと君に伝えたかった。ありがとう。壱也君」 微笑んだ吉崎の頬を一筋の涙が落ちた。

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