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面白そうなふたり2
「俺、ママのすっぴん気になるな~」
「なぁに言ってんの!企業秘密よ」
「なんだよ企業秘密って、そんな隠すものでも、もったいぶるものでもないだろ光彦」
乙女じゃあるまいし、ビジネスオネエのくせに『企業秘密』などと宣う光彦を冷かそうと、横槍を入れる。
「こら!勝手にここでその名前を呼ぶなっつってんでしょ!」
「ふーん、光彦って言うんだ」
「ここではみっちゃんよ。名前はプライベートじゃなきゃ嫌」
「プライベートならいいんだね?顔見るのも?」
面白いことに、至の方も食い気味に会話が進んでいる。
なぜかいい感じになってきているので、秀司は笑いが止まらない。
(光彦の顔の良さに気がついたか…?)
「いいんじゃない?オフの時に会っても。彼ならちゃんとある程度は分かるでしょ。そういうの」
「ん?何のこと?」
「まあ色々あるのよ」
『そういうの』とは、光彦のプライベートの顔ということだ。
光彦がビジネスオネエであっても、何であっても口外したり客としてきた時のマナーは口に出さなくても察することができるだろうと言うことだ。
「いいわ。2時間もしないうちに私は今日上がるし。飲み直しってことで会いましょ?」
「え、いいの?」
「色々お話聞きたいけど、これじゃあアナタとゆっくり飲めないし」
「他にもお客さんいるし、俺ばっか相手してられないもんね」
「ごめんなさいね、このタラシ野郎の相手させて…じゃあ、楽しんでってね」
至ににっこりと笑みを向けると、光彦はルンルンで店の奥へと入って行った。
去り際に秀司は、好みの男にちょっかいを出さないように注意された。
睨みを利かせてそう言われたものの、秀司には全くその気がなかった。
それほどあの夜が忘れられないのだ。
当分、いや、彼をものにするまで他には手を出さないつもりだ。
「ママからの信用全くないじゃん」
「そんなに信用ないかな…俺」
「下半身の信用がないんじゃね?」
「割り切った関係を徹底してるんだけどな…」
(あの子も俺のこと信用してないんだろうなぁ…)
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