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別の味も楽しみたい

「仕事終わったみたいですよ。裏口で待ってるそうです」 秀司に促され、至は支払いを済ますと店の裏口の方へ向かった。 空気を読んだのか、秀司とは店の前で別れた。 裏へ回ったが、ママと思しき人物はいない。 体躯の良い男が壁にもたれてスマホを弄っているだけだ。 (え、もしかして…この人がママ?) 恐る恐る近づいて、話しかけた。 「えーっと、ママ?」 「あ、社長さん。秀司は帰ったのか」 「………」 「ん?雰囲気違うって?」 至のようすに気がついてクスッと笑う。 その様は先程の女装した光彦と何ら変わらなかった。 「ママがこんなイケメンだったから、びっくりした。あと、オフの時はあの可愛い口調じゃないんだね」 「っぷ、社長さん、あんなのを可愛い口調とか言って…ふふ、そんなの初めて言われた」 「至でいいよ。その代わり光彦さんって呼んでいい?」 「好きに呼んでくれたらいいよ。あれは仕事用の顔だから。俺は別にオネエじゃないんだ」 衝撃の真実にさっきから理解が追い付かない。 ママ改め光彦の容姿も、あのオネエ口調がビジネス用なのも何もかもすんなりと処理しきれなかった。 光彦と秀司の間で交わされた至には話が読めない会話の真相が今分かった。 (それにしても…ママめっちゃかっこいい) 至よりも数センチ高い身長と、厚い胸板――抱き締められたらどんなに心地良かろうか。 顔も彫りが深く、鼻が高い。 濃い眉毛に切れ長の目、日本人離れしたその顔に合う、ぽってりとした唇は思わず目がいってしまう程に性的魅力を放っている。 (うぅ、抱かれてぇ…絶対アソコもデカいよな?) 「さて、飲み直すと言ったものの、どうする?ウチくる?」 「え…いいの?」 「いいよ?言っとくけど、狭いよ、ウチ」 「そんなの気にしないって!むしろ初対面なのに、光彦さんこそいいの?」 いきなり部屋に上がれるとは思っておらず、テンションはますます上がっていく一方だが、初対面で部屋に上げる光彦が心配になった。 一晩の相手を自分の部屋に上げる人間も中にはいるのかもしれないが、至には理解できなかった。 「秀司の上司っていう立場があるから。それに、ちゃんと社会的地位もあるし、常識は分かってるし大丈夫でしょ」 「そんなの俺に言われても…俺に襲われたらどうする気?」 「が襲う?じゃれるの間違いでしょ?……まあ、そうなったら、ちゃんと俺が美味しく食べあげるよ」 光彦は低い声と共に一瞬だけ、獣の目を至に向けた。 光彦の雄の部分を見せられた至は背筋がぞくぞくして、今すぐ喉元を晒して噛み付かれたくなった。 なーんてねと茶化す光彦の声は聞こえない。 飲み直すなんてありえない。 ただ、抱かれたい。 至はもう、それしか考えられなくなっていた。

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