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別の味も楽しみたい2
「コンビニでお酒買ってく?」
「光彦さんも飲むでしょ?俺買ってくるよ」
「ありがとう。その代わり程々にね」
軽い返事をしながら光彦の運転する車を降り、近くにあったコンビニに車を停めてもらう。
光彦の要望はとにかくビールとのことだったので、光彦の言われた通りのメーカーのビールをカゴに何本も放り込む。
至はというと、酒は好きだがそれほど強くはないため、度数の低めのものを選んでカゴに入れた。
「よいしょっと!お待たせ、光彦さん」
「ちょっと買いすぎたんじゃ…」
「光彦さんがビールビールって言うから殆どビールだよ。俺はそんなに買ってない。余ったら冷蔵庫に入れて置いてよ」
「じゃあ、ありがたくそうさせてもらおうかな」
お互いに何となく無言が心地よく、職業柄、他人と会話に花を咲かせなければならないが、至も光彦も他愛のない会話を少しするだけで変に取り繕う必要を感じなくて楽に思えた。
「ここが俺の住んでるマンション、小さいだろ?」
「何でも俺と比べないでよ。何か恥ずかしい…しかも普通のマンションじゃん」
「はははっ、ごめんごめん。社長さんなんて家に呼んだことないから、ちょっと緊張してるのかな。美味しいツマミ作るからさ、許して」
「光彦さんずるい。イケメンにそんなこと言われたらみんな許すに決まってるし」
至が不貞腐れている間に、車は駐車場へと入っていく。
いつの間にやら車は停車しており、光彦の後を付いて行く。
「それ、俺が持つよ。お客さんに持たせるのは悪いしね」
右手の袋を自然に掻っ攫って、にこりと微笑む。
至は少し肌が触れただけで、過剰に反応してしまい、礼を言うタイミングを失ってしまった。
(ナチュラルにいい男過ぎて…ヤバイぞ)
「あー早く飲みてぇ~。仕事終わりのビールが最高なんだよなぁ」
「仕事でも酒飲んで、家帰っても酒飲むんだ。光彦さん酒強いね」
「酒は強いけど、仕事中はあんまり飲まない。飲むのは家でばっかり。
独りで飲むのはさすがに悲しいし、誰かと飲めるのはすごく嬉しい…」
照れくさそうに嬉しがる横顔を見た至は胸をギュッと掴まれたような感覚になった。
そんなことは知る由もない光彦は、至を部屋へと招く。
「ちょっと散らかってるけど、気にしたら負け」
「ははっ、もう負けそうなんだけど~っ、お邪魔します」
「そんなに気になる?」
「うん、何となく光彦さんの部屋気になるもん」
光彦の部屋は、相容れないはずのナチュラルとモノトーンが共存しているハイセンスな空間だった。
店の内装といい、自宅といい、光彦の美的センスがこれでもかと光っている。
「やっぱり光彦さんセンスいいね。すごくオシャレ」
「そう?目の肥えた社長さんに言われると自信になるよ」
「そんなことないって。さ、飲も飲も!」
「至くんシャワー浴びてく?約束通りツマミ作ってるからさ、良かったらその間に入って来な?」
『下着も置いておくからさ』そう言って光彦はキッチンへと向かった。
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