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運は誰の味方?2
慎から提出された書類を確認した後、秀司もさっさと仕事を切り上げた。
今の状態では、いくら頭を切り替えようとしてもできないと踏んだのだ。
今日も今日とて宇海がいることを祈りつつ、いつものバーに立ち寄る。
「いらっしゃー…って、また秀司?最近よく来るわねぇ。ウワサになってるわよ」
いつもは週1稀に2回、それが今では週4回以上…
『また会えたら』
そう言っていたけれど、どこで会えるのか全く分からず会える可能性があるとするならば、このバーしかないと思って来られる日は欠かさず来ている。
しかし、宇海に出会ってから2週間、1度も宇海に会えていない。
それでも来てしまうのは、宇海のことが忘れられず今日こそはいるかもと青臭いガキのように淡い期待寄せてしまうから。
「そんなのどうでもいい」
「来てたわよ」
秀司が毎回宇海のことばかり聞くものだから、言葉を遮るように告げられた。
「ほ、本当か?」
その言葉を聞いて、心臓がドクリと跳ねた。
「タイミング悪すぎ。30分くらい前に帰っちゃったわよ」
「なんだよ…最悪じゃないか」
力尽きるようにカウンターの椅子にどかりと座った。
「仕方ないわね。何か食べてく?」
「ん、頼む…」
「あ、そういえば。『そろそろ鷹崎さんが来る頃だろうから』って言って帰ったわよ。実はアンタのことよく知ってる人なんじゃないの?」
「え?どういうことだよそれ。もし知り合いだったら俺は一生あの子と入れ違い??」
「アハハ、いい気味ね。あの秀司が遊ばれてるわよ!そんなの知れたら色男の名が泣くわね…くくく」
そう揶揄して、光彦は小バカにしたような笑い声を上げた。
「それでもいいさ。たまにはそういうのも悪くない。それに、じっくり待った方が美味しいものってあるだろ?」
秀司は、お前が手引きしているのは分かっている。という意味も込めて挑発的な笑みを浮かべて返答した。
「ふっ、アンタそれ自分に言い聞かせてるのよね?これは神様が私たちのために与えてくださった秀司への天罰なのよ!」
「ったく…俺の気も知らないで人の不幸を嬉々として喜びやがって」
「なーにいってんの!アンタが人を不幸にさせてたんだから、これくらいで済んだことを感謝しなさいよね!」
(はぁ、コイツの小言もいい加減聞き飽きたな…)
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