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第4話

 渉(わたる)は待ち合わせ場所に、奏斗先生が来てくれたことに感謝した。  誰にも言えなかったことを相談したかった。孤独でつらくて恋人にも友人にも言えなかったこと。  家庭の事情。両親は渉が高校を卒業するとともに、離婚することになっていた。不仲だけど世間体を気にする二人に渉は疲れていた。  卒業を迎えさらに孤独になるのかと周りを見渡したとき、先生と目があった。いつものまなざし。どこか一歩引いたような態度。それでも生徒からの信頼は結構あった。  奏斗先生は嘘をなるべくつかない。そのことが生徒の心をつかんでいた。  卒業をして、もう生徒でなくなる。校門を出てしまう前に自分のわがままを聞いてほしかった。  とにかく、だれにも言えない相談がしたかった。自分は必要な存在ですか…と。

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