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第6話

 奏斗は言葉にならない衝撃を受ける。奏斗にとって渉は『必要な存在』以上に思っている。いなくてはならないほどに。 「……奏斗さん?」  そこまで思い詰めるほど過酷な家庭環境にいた。そんなことさえ奏斗は知らなかった。自分自身がふがいない。 「渉君、それは『自分は必要ない存在かもしれない』とも聞こえるんだけど?」 「はい。正直なところ、俺はここにいてもいなくても……どうでもいい存在かと――奏斗さん?」  奏斗は無言でぬるくなったカフェラテを一気に飲み干した。 「渉君、もしかしなくてもすでに家を出ていたりするかな?」 「はい、卒業式は終わったので」 「そう……」  奏斗の心の中で何かが切れた音がした。

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