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第18話

二、ハリウッドツイン 「 随分と一気に咲きました。 奈良では枝垂れ桜が先に咲いて、そのあと染井吉野が咲くのですが、 今年はこの二、三日で一気に。 本当に良い時に来られましたね 」 荒池のほとりの古式ゆかしいホテルにチェックイン手続きを済ますと、最後にフロントマンにそう声をかけられた。 週末の花見客で賑わっているホテル。外にあった白いオープンカーに 今日は何か催しものがあるんですか?と草太が尋ねると、 「 ウエディングがありまして 」 と一層楽しそうに話す年配のドアマン。 フロントの前の絨毯が真紅なのにも心が浮き立つ。 なんてことはない、二人でいると全てが楽しいんだ。 流石に予約の時には同室でおかしくないか迷ったことを草太に告げると、 軽く笑いながら、部屋はダブルにしたのか? とからかわれたんだっけ。 部屋は新館のツイン。 以前に家族旅行で泊まった時は宿泊フロアは一階で、朝親子の鹿が部屋のベランダ先で草を食んでいた姿を見たことを懐かしく思いながらベルに案内されて着いた部屋は、 一階のツインルーム。 入った途端固まった僕。 ハリウッドツインのベッドに目が泳ぐ。 ベルボーイは何事もないように、部屋の説明を終えると丁寧にお辞儀をしてドアを閉めた。 僕を可笑しそうに眺める草太。 なんだよ、と睨む僕。 長い腕が簡単に僕の身体を搦めとる。 「 ミスした?って思ってる?」 草太の胸に頰を押し付け、ううんと首を横に振ると、 「 じゃあ、笑って 」 と指で僕の前髪を避けるとそこに触れるキスをよこした。 少し長めのキスは僕らの週末を物語るよう。 ハリウッドツインを覆うフホワイトの上品なシーツが微かに華やいで見えた。

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