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第19話

三 、 夕暮れのキス ゲイな僕と、そうじゃなかったはずの草太。 草太の気持ちは僕に向いてる? 夕食は俺がプロデュースするからと任せたんだけど、行く先は内緒だからと一向に教えてくれない。 「 ぜったいに上手いし、お酒もシェフの料理に合わせてチョイスされてるから大舟に乗ったつもりでも安心して 」 楽しそうに話す草太を見てるだけで僕はもうおなか一杯なんだよね。 公園を通って歩いていけると暮れかかった春の夕陽が落ちる芝の上を踏んで行く。 遠くには鹿の群れがそぞろ歩きする姿。花が微かな風に揺れていて桜色の花びらが蝶のように舞っている。 「 綺麗だ 」 僕をまっすぐに見てそんな台詞はずるいよ。 紅くなった顔を俯けて、こんな風な幸せがある事を思いもしなかった異国の風を思い出す。 人影が見えない仄かに暗い木の陰でふっと頤を挙げる指が震えている? 違う震えているのは僕の方。 恋人のキスにまだ慣れない僕の方。

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