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第3話

影絵 駅 3 春になる前の墓参り。 なんでこんな時期になったかというと、単純にお祖父さんの十三回忌が3月の頭だった。 まぁでも助かった、鎌倉は東京よりは温い海風でコートの上にマフラーを巻かなくても良いくらいあったかい。 少し遅い朝に鎌倉駅で待ち合わせするするのは最近ではたまにしか会わない両親。 逗子のお寺で営まれる法要、帰りは葉山の料理屋さんで食事が出るというので、普段は車移動の両親が電車で行くからそれなら同じ時間だし、と一緒に行くことがなんとなく決まった。 僕は東京住まいだから横須賀線で逗子まで一本だけど、両親は江ノ電沿いの鵠沼というおっとりした住宅地に住んでるから当然のように待ち合わせは鎌倉駅。 草太には両親と一緒、と伝えてあったんだけど草太はどうやってくるのかなぁ、泊まるのかな。そのことについての連絡はなかった。 僕はその日東京に帰らないと鵠沼の家に泊まることになる。 忙しい両親だから心地よくほっとかれるんだけど、 草太がいるならどこかへ、 行きたい…… 鎌倉で落ち合い逗子まで一駅。 元気そうだ 仕事どう? 〇〇君は元気にしてる? そんな簡素な会話でもあったかいし、僕のことと友達のことを聞いてくれる。 その遠慮じゃない心地よい距離感が良いなと思う、この人たち。 久しぶりにぬくぬくした気持ちは逗子駅に降りた途端、コトリと音を立てて止まる。 僕の目に飛び込んできたのは改札口のあるホームの連れだった影。 雄介の手をしっかりと握っている草太と、二人に寄り添い子どもらしい色合いの小さなリュックを持っている恵という名の雄介のお母さん。 二人と小さな一人のシルエット。 影絵のキツネがうつむいた。

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