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第4話
影絵 待合 4
法要の行われるお寺までは逗子駅から歩いても行けない距離ではないが、仕事が残業続きで運動不足の僕を連れてるからと両親はタクシーに乗る。
体力ないわけじゃないけど気落ちしていた僕はありがたく便乗した。
三人連れ立って歩く姿を見たくなかった。それだけ……
お寺の門をくぐりタクシーは駐車場に止まる。
「 ちょうど良い時間だけど、お姉さんたちがいるかもしれないから待合に行こうかしら 」
母の言葉で本堂の横の日本家屋に上がると、座敷には見知った顔の人が何人か座っていた。
父と母が愛想よく挨拶を交わす間、僕
も一応背後から挨拶をする。
「 馳君、久しぶりね 」
声の方にふと顔を向けると草太の母親で僕の伯母さんの美知さんだった。
「 あ、ご無沙汰してます 」
「 元気にしてた? 」
何か言いたげな気持ちをその言葉に隠したようだった。
その時、玄関から幼い元気な声が聞こえてきた。
「 あ、来た来た!」
嬉しそうに伯母さんは玄関に迎えに出る。
座敷にパタパタと入ってきた小さなスター 雄介に注目が集まる。
雄介のそばに直ぐに跪いて半ズボンを上げたりと世話を始める伯母さんの向こうの障子に長い髪の女の人の影が写る。
草太が呼ぶように手を伸ばすと、影の細い腕が応えるようにそのシルエットから伸ばされた。
いやだよ、見たくない……
僕は廊下伝いに先に本堂に入った。
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