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第5話
影絵 座布団 5
先に本堂に入ると支度を済ませた様子の住職が
「 よくおいてくださいました。
皆さんに整いましたとお伝えしてきますので 」
と僕に話しかけながら待合の方へ行きかけたのを止め、
「 僕が言ってきます 」
と、結局はまた待合の方にとって返した。
中廊下を渡ると気配を察したらしい叔父や叔母が三々五々やってくる。
「 用意ができたそうです 」
と伝えると、
「 ありがとう 」
と言いながら僕の横を通り過ぎる。
母親が
「 椅子あった?」
と聞くので、
「 気がつかなかったけど、全部座布団みたいだったよ 」
というと、
「 うわー 」
と言いながら僕と一緒に本堂に入った。
遠慮のない親戚達のせいか前からきちんと座布団が埋まっていく。僕も両親と共に奥から詰めて座ると、廊下の方から子どもの声がしてきた。
見ないように俯いたまま座っていると、空いている廊下の側ではなく、奥の僕の後ろに一人で座布団に腰を下ろす気配があった。
背中がすっと伸びる、この空気は知っている。草太……
肩にそっと手がかけられ、
「 馳、冷たい。なんで先に行くんだよ 」
と僕が一番欲してる声が聞こえてきた。
じんわりと暑くなる頰、振り向いたら顔が火照ったのがばれちゃうだろう……
僕は気づかれない程度に熱を冷ますように首を振る。
折良く響いてきた読経の声に、
応えなかった僕の気持ちを座布団の下に隠した。
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