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第7話
影絵 高鳴る 胸は 7
「 草太君と馳君は泊まっていけばいい 」
伯父のそんな一言がとても嬉しかった。2人だけで朝まで過ごせる久しぶりの機会に僕の胸は高鳴った。
改築されたお祖父さんの家は昔の続きの和室が絨毯敷きの和洋室になり、そこには二十人はゆうに座れる耳付き無垢材の長テーブルがでんと置かれていた。派手好きな伯父は銀座から馴染みの店の寿司職人を呼んでおり、皆がそれぞれプロの握りに舌鼓をうった。
雄介は好きな玉子焼きとカッパ巻きを沢山食べてご機嫌で叔母さんに抱っこされている。草太を伯父さん達に取られて手持ち無沙汰の恵さんが誰とも会話がはかどらない。それをほっとくわけにもいかないので歳の近い僕が相手をするようになった。
他愛もない世間話が尽きる頃、草太と話していた伯父さんが泊まっていけばと言った途端、恵さんの眼差しが僕を射抜くようにきつくなる。
やっぱり……と思いながら、僕はそれでも僕の我儘を通すよ。
「 はい、ありがとうございます 」
20畳ほどの部屋に通る声を出して応えた僕。伯母に使用した寝具の後始末など細々とした事を聞かされている間に恵さんは寝ている雄介を抱っこした叔母と帰っていったようだった。
玄関から草太が入ってくる
「 送ってったの?」
「 ああ、ハイヤー呼んでたからそこまで 」
「 大丈夫だった?」
「 何が?」
まさか恵さんが、というわけにもいかない僕は、
「 雄介……と叔母さん 」
と言うと、困った顔をしながら、
「 俺が一緒に帰らないと雄介があっちの家に行っちゃうから、なんか小言は言ってたな 」
誰もいない玄関の上がり框に腰をかけ僕の腕を引っ張って横に座らせると、
「 馳、今夜は慰めてな 」
苦しくなる僕の胸、でもその言葉の意味が大したことではないことも肝に銘じるんだ。
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