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第9話
影絵 影絵再び 9
開けっ放しの縁側では肌寒くなる。
背後から僕を抱えていた草太が、
「 中に入るか 」
と言うので仕方ないなと腰をあげる。
「 アイタタ〜、やっぱりいくら細身でも雄介と違って長い時間だと脚が痺れる 」
……あたりまえだろ
僕は痺れている草太の足首をワザと軽く踏んづけた。
「 いってえ 」
と言いながら這うようにして板の間に入ってくる。僕が板戸を閉めると、
「 お前、あの本読んだ?」
あの本、あぁこの間の影絵の本か、
「 あ、うん。暇つぶしに電車の中でちらりとは 」
「 あんなに種類があるとは思わなかったし 」
と言いながら座敷のスタンドの灯りを
点ける。
「 俺、いくつか覚えたから。ちょっと電気消して 」
と着ていた上着を脱ぐと無造作に障子のそばに座る草太。
「 え?今やるの?」
「 あぁ、ちょっと見てみろよ 」
板の間の照明を消すと障子越しに草太の横顔と手が映る。
お祖父さんより大きい身体、お祖父さんより大きい手。
器用に動くこの指が僕だけのものならいいのに、
「 これなんだかわかるか?」
「 なに?」
「 ペンギンだよ、雄介が好きなペンギン。馳も覚えて……」
その後の言葉は聞こえない。
障子に映るヨチヨチ歩くペンギンすら憎らしい自分に嫌気がさす。
こんな気持ちのまま二人っきりの夜を終えたくない。
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