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第10話

影絵 悪意 10 草太が先で僕が後、交代で風呂を使った。 伯母に休むように言われた部屋にはセミダブルのベッドが2台置いてある。 そのうちの片方に腰掛けて水を飲んでいた草太がタオルを頭にかけてる僕を見て声をかける。 「 しっかり髪乾かせよ、枕が湿るから」 「 ドライヤー面倒、バスタオル枕に敷くから 」 と返すと、 洗面所から取ってきたのかドライヤーを持ってきた。コンセントにコードを繋ぎ僕の横に座ると、僕の頭を乾かし始める。 ゴーという音と髪を手繰る草太の指が気持ちよくて目を瞑ると軽く指が唇を掃いた。 あっ、わざと?偶然? 期待しない、と、 知らんぷりをしていると、 「 お前、けっこう……」 と草太の呟く声が熱い風の中聞こえてきた。 なに?と目をあげるとすぐ近くに草太の顔があってびっくりする。 ドライヤーのスイッチを切った草太は僕の頭をポンポンと2、3回叩いて、 「 馳さ、なんか俺たちが別れたのを自分のせいだと思ってる?」 と唐突に話したくないことを聞いてきた。黙ってしまった僕に 「 俺たちがうまくいかなくなったのは恵の遊びのせいじゃない。寧ろ俺の方に原因があったんだ。だから馳が悩むことはない。お前に教えてもらう前にとっくにダメになってたんだから……子はかすがいって言うだろ、なんとか効いていたそれを断ったのは俺の方だ 」 浴衣を着た僕の肩を抱くと、 「 だからお前は気にするな 」と頭と頭をくっつける。二人の洗い髪は同じ香り。 違うよ草太、それは違うよ。二人の関係が例えそうだったとしても話した僕には悪意があった。気持ちの悪いくらいのどす暗い悪意。 口にできないその言葉を僕は奥歯で噛み締めた。

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