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第13話
影絵 待ちぼうけ
ブルっと背中が寒くなる。
もしかして待ちぼうけ?
忘れてる?そんなことないよね!
事故?え?
焦って駅から出ようとした時、手に握っていたスマフォが震えた。
電話、草太からだ
「 もしもし……馳?」
「 ……うん、そう 」
「 ごめんな!連絡もしないで、今病院なんだ。雄介が熱出して、結構高い熱でそれで 」
「 うん僕は大丈夫だから、雄介君は?」
「 ああ、今薬で眠ってる。インフルエンザらしいから、辛そうだけど治る病気だし 」
「 そっか、良かったとは言えないけど病院に診てもらったら安心だね 」
そう言いながら目に何か溜まっていくのがわかった。目をこすると人差し指の背が濡れていた。
電話から声が聞こえる。
「 だから悪い、今日は出られそうもないんだ……恵も具合が悪いらしくて 」
「 大丈夫だから、ちゃんと看病して!」
わざと元気よく言って僕は通話を切った。これ以上聞いてたらダメだ。僕の黒い醜い気持ちが言葉になっちゃうから。
今日言うつもりだった転勤のこと、黙ってようかな。日が落ちて日差しが届かぬ道を帰る。気分も落ち込む日曜の夜。
このくらいのこと、なんだよ!
明日会社に行けば忘れる。
はず。
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