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第12話

どうしようもなく狂わされる。 圭は恭一郎の男根が腹の中で暴れ回り、時折性感帯を突いては最奥を穿つ刺激に酔いしれる。 ずっと繋がっていたくて、きゅうきゅうと締め付けてしまう。 恭一郎は自分の陰茎が圭の後孔内の肉襞に絡み付かれ、ありったけの力でもって腰を動かす。 浴室内に肉がぶつかり合うパン──、という音が連続して聞こえるようになってきた。 そのうち2人の荒い息遣いと、時折発せられる圭の大きな喘ぎまでが響くようになる。 「はぁッ、はぁッ、……スゲー気持ちイイ」 最奥をズン──、と穿つ度に、圭の身体がタイルの上でビクリと跳ねる。 そろそろ限界だと恭一郎は感じるが、宙送を早くして絶頂に備える前に、不意にナカでイってしまった。 「え……、今、イったの、恭一郎?」 「ああ、すまん……お前、ピルは……その、飲んでいるか?」 「心配すんな、毎日飲むようにしてる」 「どうしてだ?」 「は……?どうしてって……そりゃできちゃったら困るし……」 大方そんな理由で飲んでいるのだろうと予想はしていたが、あまりにも約束通りの返事をもらうのもどうかと思う。 恭一郎は、「子供ができるとかできないの問題じゃない」と前置きした上で、圭の内側に己自身を埋めたまま、噛んで含めるように言い聞かせた。 「いいか、男性Ωの出産成功率は50%以下だ。出産に失敗するのではなく、出産で死ぬ確率の方が高い」 「へ……?そ、なの……?」 恭一郎が「ピルを飲んでいるか?」と訊くのは、妊娠を警戒してのことだとばかり思っていたが、妊娠の先にある不幸を回避したいがために問うていたのかと、納得した。 同時に涙が溢れてくる。 こんなに自分を思って、Ωについて色々と調べてくれる恋人がいることが嬉しい。 「圭の代わりはこの世界のどこにもいない。だからもっと安心して出産できる時代になるまで、ピルを飲み続けてくれ。それが無理な時はちゃんと言え。俺が避妊具をつける」 「コンドーム……?」 「そうだ」 ピルも立派な薬である以上、いつ副作用が起こるか分からない。 もし圭がその副作用に悩まされることがあれば、いつでも服用をやめてくれて構わないというのが、恭一郎の主張だった。 「お前にばかり負担をかけるつもりはない。だから、その時は必ずそう言ってくれ」 「恭一郎……お前、ホント、いい男だな?」 「お前に褒めらるのは、純粋に嬉しいものだな」 圭の手が取られ、恭一郎の頬に押し付けられる。 そうして目を閉じ、口元を緩める彼の表情は、同性の圭から見てもとても美しかった。 恭一郎には圭のような派手さはないものの、立派にイケメンにカテゴライズされる容姿が備わっている。 「ビックリだわ……」 「何がだ?」 「恭一郎の、そういう……満たされた顔っつーのかな。穏やかで、幸せそうで、スゲー綺麗」 「お前の比ではないだろう」 否、そんなことはない。 圭はそう否定しようと思ったが、後孔の中の恭一郎自身が膨らんだように感じて、セックスに集中することにした。 満たされたい、満たしてやりたい。 互いが互いにそう思っているからこそ、いつだって一緒に絶頂を迎えられるのだろうと、圭は半ば本気で信じている。 「突き上げてくれよ……」 「言われずともな」 ニヤリと笑う恭一郎も、なかなかカッコイイなと思う。 「あ、あぁんッ……イイッ……っ……」 穿たれる度に、恭一郎の匂いが濃くなっていく気がする。 圭が放つような甘い匂いではなく、雄の匂いだ。 だが、不快ではなく、むしろずっと嗅いでいたい類の匂いだなと思う。 「ッ、また、イきそうだ……」 「俺も……ね、恭一郎……ギュッて抱き締めて」 圭は少しだけ上体を起こして恭一郎の首に両腕を巻き付けると、下から腰骨を思い切り押し付けて結合を深くせしめた。 そうされることで恭一郎は肉棒をこれでもかとばかりに圧迫される。 そうすることで圭は恭一郎自身を最奥で受け止めることができる。 「あぁぁぁ──!?」 「くうぅ──!?」 2人の悲鳴にも近い喘ぎは、浴室内に響き渡る。 同時に達することの悦びが、圭と恭一郎の背中を駆け抜けていく。 「ずっとこうしていたいけど……さすがに背中痛ぇわ……」 そう言って笑う圭に、先ほどまでの翳りは見られなかかった。

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